「姫野ベンチ」の生みの親が語るCFDの実務適用の勘所:SBDソリューションカンファレンス2019(2/2 ページ)
構造計画研究所は「SBDソリューションカンファレンス2019」(会期:2019年5月10日)を開催した。本稿では、理化学研究所 情報システム部 研究開発部門 コーディネータの姫野龍太郎氏の特別講演「CFDの実務適用の勘所」について取り上げる。
現場導入における課題と苦労
この他、自動車メーカーに勤務していた当時、最も苦労したポイントとして、流体解析の実務適用時の問題対策を挙げる。具体的には、
- 新しい仕事のやり方への反発
- シミュレーション結果に対する信頼性(疑問)
- 経済的な損益
- 情報の不足
といった現場で発生した問題への対応、対策が必要だったという。
姫野ベンチマークテストとは?
続いて、姫野氏は「姫野ベンチマークテスト(himenoBMT/通称:姫野ベンチ)」について触れた。姫野ベンチマークテストとは、姫野氏が非圧縮流体解析コードの性能評価のために考案した手法だ。ポアゾン方程式解法をJacobi(ヤコビ)の反復法で解く場合に、主要なループの処理速度を計るもので、コードは非常に短く、簡単にコンパイル、実行できるため、即座に実測速度(何MFLOPS[メガフロップス])を求めることができる。
1980年代にはインテルの「Paragon」や「nCUBE」など、多数のプロセッサの並列計算機があったが、並列化のやり方がそれぞれ独自で、テストしようにもプログラムの変更が必要だった。そこで、姫野氏は空力計算用ソルバーの中から、約4割の計算時間を要していた圧力のポアゾン方程式を解く部分を抜き出して、簡易版の非圧縮性流体のベンチマークコードを作成した。これが姫野ベンチマークテストの基本になる。
ベースはSOR法(Successive Over-Relaxation:逐次加速緩和法)だったが、並列化が容易なヤコビ法に変えた。さらに演算数を数えて、計算時間から計算機の速度をMFLOPSで計測することにより、PCから並列計算機、スーパーコンピュータ(スパコン)まで測れるようにした。
このように姫野ベンチマークテストについて紹介する姫野氏だが、「実は自分自身で『姫野ベンチマークテスト』と呼んだことはなく、『圧力のポアゾン方程式のベンチマークテスト』と言っている」と話す。
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