三菱マテが品質問題の再発防止状況を公表、検査自動化などを前倒しで推進:製造マネジメントニュース
三菱マテリアルは2019年5月13日、同社子会社の三菱電線工業ほか4社で発覚した検査データの改ざんや検査不適合品を出荷した事案について、再発防止策の実施状況を公表した。
三菱マテリアルは2019年5月13日、三菱電線工業をはじめ同社子会社5社で発覚した検査データの改ざんや検査不適合品を出荷した事案について、再発防止策の実施状況を公表した。
三菱マテリアルグループは2017年11月から一連の品質問題を明らかにしており、2019年2月には不正に関与していた同社子会社とその元役員らが不正競争防止法違反により東京簡裁から有罪判決を受けた。同社グループは外部取締役や専門家を主とする特別調査委員会による調査を受け、2018年3月に再発防止策を取りまとめていた。
同調査委員会は品質問題が発生した要因として、「受注」「納期」偏重の姿勢や工程能力を超えた仕様での受注、品質保証体制の仕組みの不備、品質管理ができているというおごりの意識、事業に対する資源不足、監査手続きの形骸化などさまざまなリスクがあったことを指摘。これらリスクに対応する再発防止策としてグループガバナンス体制の強化とともに、以下の6項目を推進しているとする。
- 受注時のフロントローディングシステムの浸透
- 質管理部門の体制、権限の強化
- 品質教育の拡充
- 検査設備自動化の推進
- 品質監査の強化
- 外部コンサルタントの活用
受注時フローティングを強化、検査設備自動化も着々と進行
製品開発の初期段階から品質を作りこむ「受注時のフロントローディングシステムの浸透」では、対象拠点を中心としてこれまでに見積時デザインレビュー(DR)の強化や設計開発段階からの審議体制確立、技術データ蓄積、受注決定プロセスの運用改善などを行ってきた。2019年度以降は、設計時点でのフロントローディング推進研修や対象拠点以外の拠点においても同施策の横展開を狙うとする。
「品質管理部門の体制・権限の強化」の点では、2018年度までに品質保証機能の独立性を確立し、工程内検査体制の展開や品質保証基準の見直し、品質管理システムの構築、品質保証部門人材の強化や部門内ローテーションを実行したとし、2019年度以降も有効性を確認しつつ同施策を継続する方針だ。
また、「検査設備自動化」については2018年度から3年間をかけて、データ収集方法の取りまとめや社内基幹システムの改修、自動化対応検査機器の導入と基幹システムへのデータ自動取り込み化、さらには新たな計測技術の開発などを行うことを計画している。自動化対応検査機器の導入計画も合わせて公開され、海外拠点への前倒し導入の実行などにより2020年度末までの早期目標達成を目指すことを示した。
なお、三菱マテリアルは同じく2019年5月13日に2018年3月期(2019年度)決算を発表しており、売上高は前期比4%増の1兆6629億円と増収であったものの営業利益は同49.4%減の368億円、当期純利益は同96.2%減の12億円と大幅減益だった。金属事業の製錬コスト増加や期末棚卸による棚卸減耗損の発生などの影響を受けたとする。
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