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IHIが国交省に再発防止策を提出、エンジン2台と部品を自主回収へ:製造マネジメントニュース
IHIは2019年5月10日、民間航空機エンジン整備事業で発生した不適切検査事案について、国土交通省に再発防止策を報告したと発表した。
IHIは2019年5月10日、民間航空機エンジン整備事業で発生した不適切検査事案について、国土交通省に再発防止策を報告したと発表した。
同社は社内調査や外部専門家で構成した第三者委員会による原因分析を実施。その結果、以下の要因や背景があったとする。
- 業務量の増加に応じた検査員の増員計画がないまま、納期を優先し作業や検査を進めた
- 現場の安全意識やコンプライアンス意識が働かなかった
- 検査印の管理が不十分であった
- 検査記録システムで入力が煩雑だった
- 作業記録書の記述方法が不明確であった
- 検査職場のOJT(On the Job Training)指導に関するルールが分かりにくかった
- 同じ職場内に検査員と作業員が所属しており、両者の間の独立性が担保されていなかった
また、過去に同事案に関連する内部通報があったにもかかわらず見過ごされたことに対しては、以下の要因があったと分析した。
- 過去に受けた厳重注意や業務改善勧告が生かされなかった
- 経営層まで情報が共有されず、必要な対策を講じていなかった
- 現場の検査員と中間管理者のコミュニケーションが不足していた
- 経営層や管理職員が現場の実態を直視せず、現場に過度な期待があった
この原因分析を受けて、同社は再発防止策として安全意識の再徹底およびコンプライアンス教育の実施、安全管理体制の抜本的見直し、業務実施体制の見直しなどを実施する。
同社は同事案の影響について検証した結果、「搭載エンジンの安全性に直ちに影響はない」とするが、「長期的継続使用の観点から、会社として、エンジン2台、部品58個について自主回収を行う」方針を示した。すでに部品56個は回収済みであり、残る部品2個とエンジン2台も同年5月末までに処置を完了させる予定だ。
不適切検査が発覚した同社瑞穂工場(東京都瑞穂町)は、2019年2月から民間航空機エンジン用整備ラインの操業を自主的に停止している状況だ。同ラインの操業再開は国土交通省東京航空局による点検後になるとみられる。2019年5月8日に開催された同社の決算説明会で、同社社長の満岡次郎氏は操業再開時期について「手を動かし始めるのは5月中という想定だ」と語っている。
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