IHIが航空機エンジン部品製造でも不適切検査を公表、防衛エンジンも含む:製造マネジメントニュース
IHIは2019年4月8日、航空機エンジンの部品製造事業において社内規定に反する不適切検査があったと発表した。不適切検査の対象は民間航空機用エンジンに加え、防衛省向けエンジンも含まれることを明かした。
IHIは2019年4月8日、航空機エンジンの部品製造事業において社内規定に反する不適切検査があったと発表した。不適切検査の対象は民間航空機用エンジンに加え、防衛省向けエンジンも含まれることを明かした。
同年3月に公表した民間航空機エンジン整備事業における不適切検査の発覚を受け、同社では品質に関する総点検を全社で実施。航空機エンジン事業を全般的に詳細調査したところ、部品製造においても不適切検査があったことが判明した。
同社の航空機エンジン製造事業は相馬工場(福島県相馬市)、呉第二工場(広島県呉市)、瑞穂工場(東京都瑞穂町)で操業されている。これら工場を2017年1月〜2019年1月の期間で調査したところ、作業件数約180万件のうち7138件で不適切検査があった。対象となるエンジンの台数は非公表。「ロット単位で作業を集計しており、複数の不適切検査が含まれるエンジンもあるため」(同社広報)としている。
また、不適切検査の対象となったエンジン機種は民間機用でインターナショナル・エアロ・エンジンズのV2500、GEアビエーションのCF34、GEnx、GE9X、プラット&ホイットニーのPW1100G-JMなど。防衛省向けは非公表としている。
不適切検査の内容は、認定資格が必要な検査工程で無資格者が作業を行い有資格者の印鑑を借用していた。同社の社内規定では「外注先から部品の納入を受けた場合、認定資格を持つ検査員が受入検査を行うという非常に厳しいルールにしていた」(同社広報)とするが、「無資格者が受入検査を行い有資格者の印鑑を借用した」ケースも散見されたという。なお、民間航空機エンジン整備事業の不適切検査で発覚していたエンジンメーカーの定める正規作業手順の逸脱は、今回の事案では見つからなかったという。
同社では不適切検査が発覚した製造プロセスにおいて「規定通り正しく行われていたことが確認されているか、資格者と同等の十分な技能を有した従業員による該当の検査実施が行われているかが確認されている」とし、完成納入した部品は図面で指定された寸法、強度、性能を全て満たしているとする。また、部品の納入先である各エンジンメーカーにも同事案は報告済みで、技術的に問題がないことを確認したという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- IHIの航空エンジン不適切検査、調査した213台のうち209台で新たに発覚
IHIは2019年3月29日、同月に発表した民間航空機エンジン整備事業での不適切検査について経済産業省から行政処分を受けたと発表した。追加調査した213台のエンジンのうち209台で6340件の不適切検査が新たに発覚した。 - IHIの不適切検査、背景は検査現場の「余裕のなさ」か
IHIは2019年3月8日、東京都内で記者会見を開き、同社の民間航空機用エンジン整備事業における不適切検査について、現時点で判明している事案の概要と原因を説明した。 - 社運をかけたダンパー開発の功績者が主犯、川金HDの不適切検査
川金ホールディングスは2019年2月7日、同社子会社で発生した免震・制振用オイルダンパーの不適切検査事案について、調査報告書と再発防止策を発表した。調査報告書では免震・制振用オイルダンパー事業に対する当時の経営判断や開発体制など多くの問題点が指摘され、現場が不正を犯す背景が浮き彫りとなった。 - 品質管理は新たな段階に移行すべき――コト売り時代の品質リスクを防げ
モノ売りからコト売りへの提供価値の変化、不適切検査に代表される品質不正問題の相次ぐ発覚など、激動の時代を迎えている日本製造業。製造業が抱えるリスクとは何か。品質管理における現状の課題や解決の道筋を宮村氏に聞いた。 - 日本製造業の品質保証が抱える問題、解決の方向性を示す
2017年後半から検査不正問題や製造不良による事故の発生が相次ぎ、高品質をウリとする日本製造業ブランドを揺るがしかねない状況です。そこで本連載では、これまで日本製造業では品質保証をどう行ってきたのか、品質保証における問題は何かといった点に注目し、問題解決の方策について各種手法や最新技術の活用、組織マネジメント論の面から取り上げます。 - 相次ぐ品質不正、その発生原因と検討すべき対応策
品質不正の連鎖は収束する気配を見せません。品質不正は一企業の問題で済むことでなく、産業全体の停滞を招く可能性も十分にあります。本連載では相次ぐ品質不正から見える課題とその処方箋について、事例を交えつつ全7回で解説します。