日立の「Lumada」が地中のインフラを守る、振動センサーで水道管の漏水を検知:製造業IoT(2/2 ページ)
日立製作所は、水道管やガス管などの地中埋設インフラを効率的に保守管理する「社会インフラ保守プラットフォーム」を構築した。第1弾として、水道管の漏水エリアを高精度かつ瞬時に特定するサービスを提供する計画。2019年10月から先行的なサービスを立ち上げ、2020年度から本格展開を始める。
自社開発の振動センサーで漏水を検知、データ分析技術で「誤検知もなし」
日立製作所の漏水検知サービスでは、自社開発した高感度の振動センサーを水道管に設置するとともに、振動センサーからのデータをLTE-MなどのLPWA(低消費電力広域)ネットワークでクラウドに収集する。振動センサーは、低ノイズ化によって既存の汎用センサーと比べて2桁高い測定精度を実現しており、消費電力の低減で長期間の稼働にもつなげている。これまでの実証実験では、センサーから100m離れた家庭への配水管の毎分0.6l(リットル)という微小な漏水、同250m離れた水道管の毎分8lと比較的規模の大きい漏水を検知できている。このため、センサーは300m間隔で設置すればよい。また、NTTグループとの協業によるLPWAを用いた通信を含めて、内蔵バッテリーだけで5年以上の連続稼働が可能である。
センサーから収集したデータを用いた分析は、誤検知の防止が特徴となっている。振動センサーを使った漏水検知の課題となっているのが誤検知の多さで、「8割が誤検知という場合もある」(竹島氏)。日立製作所の漏水検知サービスで用いる、高感度センサーとデータ分析アルゴリズムの組み合わせでは、現在までに誤検知は一切起きていないという。
漏水検知サービスを利用する場合、多数のセンサーを設置する必要があるが、水道管の制水弁に磁石を使って設置すればよいので手間は掛からない。センサーからの通信もLPWAによる無線通信であり、データはそのままクラウドに収集される。
導入のメリットとしては、熟練作業員に掛かる負担の低減や、より計画的な水道管の保守管理が可能になることを挙げる。災害時には、医療機関の付近にある漏水箇所から修繕するなど、修繕作業の優先順位付けなどに活用できるとした。
ビジネスモデルとしては、日立製作所がセンサーを保有し、漏水の継続監視や漏水箇所のスクリーニング、漏水調査会社と連携しての調査といったサービスを提供する。竹島氏は「漏水検知と関わる、より広範な作業を含めた包括での業務委託という形もあり得る」と述べる。
今後は、振動センサーに加えて、水道管に用いられている鋳鉄の腐食を検知できる比抵抗センサーなどを追加したマルチセンサー化により、管路状態監視や管路更新支援計画などのサービス提供を検討している。検知対象も水道管だけでなく、ガス管、下水道管、電力線や通信線の配管などに広げていく。「2025年度以降は海外展開も模索していきたい」(竹島氏)という。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- コングロマリットを価値に、日立が描く「つながる産業」の先にあるもの
日立製作所はIoTプラットフォーム「Lumada」を中核としたデジタルソリューション事業の拡大を推進。その1つの中核となるのが、産業・流通ビジネスユニットである。日立製作所 執行役常務で産業・流通ビジネスユニットCEOの阿部淳氏に取り組みについて聞いた。 - DXのPoCから立ち上げを迅速かつ容易に、日立が「Lumada Solution Hub」を投入
日立製作所はIoTプラットフォーム「Lumada」を用いたデジタルトランスフォーメーション(DX)を迅速かつ容易に行えるサービス「Lumada Solution Hub」を開発したと発表した。2019年4月1日から順次販売を始める。 - 大量生産から多品種少量まで、日立の「Lumada」が化学工場をスマート化
日立製作所は、プライベートイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2018 TOKYO」において、顧客との協創によって開発を進めている、IoT(モノのインターネット)プラットフォーム「Lumada(ルマーダ)」の化学工場向けソリューションを展示した。 - 「Lumada」がノンプログラミング開発環境をユーザー向けに展開、Node-REDベース
日立製作所は、プライベートイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2018 TOKYO」において、同社のIoTプラットフォーム「Lumada」と連携するコーディング不要のノンプログラミング開発環境を披露した。オープンソースの「Node-RED」がベースになっている。 - 日立は「カンパニー」から「ビジネスユニット」へ、成長のエンジンは「Lumada」
日立製作所は2018年6月8日、東京都内で同社の事業方針を投資家向けに説明する「Hitachi IR Day 2018」を開催。その冒頭、各事業やビジネスユニットの説明に先駆けて、同社執行役社長 兼 CEOの東原敏昭氏が登壇し、2018年4月からの新体制や、IoTプラットフォーム「Lumada」の展開状況などについて説明した。 - 高効率な個別大量生産に対応する日立大みかのノウハウ、IoTプラットフォームから提供
日立製作所はIoTプラットフォーム「Lumada」を利用して、同社大みか事業所におけるIoT活用事例の一部を汎用化し、外販を開始した。今回は、RFIDで取得したデータから各工程の進捗を把握し、遅延が発生した工程の対策を検討する「進捗・稼働監視システム」、作業時間が通常よりも長くかかっている生産工程を検出し、画像分析などにより問題点を可視化する「作業改善支援システム」の2つを提供する。