ソフト開発未経験でもカッコいいアプリを――IoTへの挑戦を支援するベンチャー:組み込み開発 インタビュー(2/2 ページ)
優れたデザインのIoTアプリを簡単に開発できる「conect+」は、ソフト開発の知見が不足しIoTプロジェクトのPoCに悩む製造業から注目を集めるサービスだ。同サービスを提供するconect.plus社長の坂井氏にサービスの概要や目指す今後の姿を聞いた。
優れたデザインのIoTアプリを低コスト、簡単に作れることが強み
実際にconect+を利用する製造業のユーザーからも、速く簡単なアプリ開発が可能なこと、デザインが美しいことが評価されている。坂井氏は「サービス展開の当初は製造業を意識していなかったが、現在はアプリ開発に悩みを持っている製造業系企業から多くの問い合わせが来ている。われわれがアプリ開発をサポートすることで、モノづくりの人はモノづくりに集中できる」と語る。
現時点では450ユーザーが登録しており、法人ユーザーではITや製造業企業のIoT開発担当者が中心となっている。また、マクニカやオムロン、SEMITEC、Kisvin Scienceといった製造業企業やベンチャー企業と協業関係を構築し、「今後もグローバルIoTプラットフォーマーとのチャンネルを作る」(坂井氏)とエコシステムを拡大する方針を示す。
また、坂井氏は2019年5〜6月をめどにサービスの大幅刷新を行う方針を明かした。現在提供するconect+は「conect+ Lite」とサービス名称を改め、無償で提供する。坂井氏は、conect+ Liteについて「デバイスをつなげ放題にするなど、どうやっても使い切れないだろうというくらいの制約で無償提供したい」との考えを示している。
企業ユーザー向けには、IoTで収集したデータの可視化に特化した「conect+ Studio」を提供する。同サービスはさまざまなIoTプラットフォームやシステムとの連携機能を備えるとともに、ルールエンジンによる特定条件のアラート機能など、現在のconect+よりも高度なデータ可視化機能を実装する。conect.plusは同サービスでマネタイズを行う方針だ。
一方で今後登場するconect+ Studioを含め、conect+の製品群は既存のIoT開発ツールと競合する点があるようにも思われる。PTCが提供するIoTプラットフォーム「ThingWorx」にはドラッグ&ドロップでWebアプリケーションを構築できる「Mashup Builder」が備えられており、主要なIoTプラットフォームにも同様の機能を持つツールが多く存在する。また、Node-REDなどコーディングの手間を減らすフローベースプログラミング環境もIoT開発の現場では多く利用されている。
市場で先行する競合について、坂井氏は「非常に高度な機能が実装されているものもある」との見方を示しつつも、「これらツールは導入や運用コストが高く、さらにスモールスタートなIoTプロジェクトでは使いこなすことに高いハードルがある」と指摘。企業が進めるIoT開発も「PoCで出来上がるアプリは手作業で開発した極端にチープなものか、これらツールに頼って極端にお金をかけたものかのどっちかになりがちだ」と分析する。
conect+は「こうしたIoT開発のギャップを埋めるもの」として、「データのビジュアライゼーションに特化し、優れたデザインのアプリを低コストかつ容易に開発できる」ことを訴求すると坂井氏は語る。
conect.plusは2023年度にエンドユーザーを10万人規模、売り上げを50億円とする目標を掲げる。坂井氏は「日本製造業がグローバル展開を目指す上で、IoTプロジェクトの迅速な展開を支援したい」と語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- IoT導入への取り組み、日本企業は遅い? ボーダフォンが語る
グローバルから見た日本製造業のIoTはどのような立ち位置にいるのか。グローバル市場を対象とした「IoT普及状況調査レポート2019」を取りまとめるボーダフォン・グローバル・エンタープライズ・ジャパンで、IoTジャパン カントリーマネージャーを務める阿久津茂郎氏に聞いた。 - IoT活用のための視点(1)「PoC」
IoT的人材になるための視点を取り上げる連載、第1回は「PoC(Proof of Concept)」がテーマ。PoCの中でも、見落とされがちな部分にフォーカスして、どのように検証したらよいのかを紹介する。 - 工場のIoT活用、「データを外に出したくない」をどう乗り越えるか
日本システムウエア(NSW)、PTCジャパン(PTC)、日本ヒューレット・パッカード(HPE)の3社は、生産効率化や予防保全といった生産現場のIoT(モノのインターネット)活用を工場の中で実施できる「ファクトリーIoTスモール・スターター・パッケージ」の販売開始した。価格は月額で50万円からで、初年度の販売目標は10社を計画している。 - PoCの壁をどう超えるのか、「IoX」に取り組むNSSOLの教訓
新日鉄住金ソリューションズ(NSSOL)は2018年7月25日、同社が推進するIoTソリューション「IoXソリューション」の取り組み状況を紹介するとともに、今後の方針について発表した。 - 学生コンテストと侮るなかれ、PoCから見えてくるビジネスの可能性
デバイスとクラウドを活用したシステムの企画からプレゼン、開発までを競う学生競技会「Device2Cloudコンテスト」。第9回を迎えた同コンテスト決勝大会のレポートをお送りする。 - PythonだけでIoTのPoCを組める、「Degu」はWeb系エンジニア向けのIoTセンサー
アットマークテクノ、Seeed、コアスタッフの3社は、Python系言語を扱うWeb系エンジニアに向けてIoTセンサー技術をオープンソースで提供するプロジェクト「Degu(デグー)」を共同で発足すると発表した。