強度設計や材料選択の基盤となる、データシート5冊を発行:材料技術
物質・材料研究機構は、2018年度分の構造材料データシートとして、「長時間クリープ試験材の微細組織写真集」「アルミニウム合金の疲労データシート」など、新たに5冊を発行した。
物質・材料研究機構(NIMS)は2019年4月1日、2018年度分の構造材料データシート5冊を発行したと発表した。クリープ特性(高温の金属に荷重がかかると時間の経過とともに変形する現象)や疲労特性、腐食特性、極低温疲労特性などについて、試験規格に従って取得した系統的なデータを掲載したものとなる。
「火力発電プラント用耐熱鋼クリープ試験材の微細組織写真集(No.M-12)」には、600〜800℃の高温で、最長約2万5100時間(約2年10カ月)までの長時間クリープ試験後に得られた光学顕微鏡組織写真、透過型電子顕微鏡組織写真などが記載されている。
「疲労データシート No.126(アルミニウム合金の疲労データシート)」では、アルミニウム合金A7075-T6について、電磁共振式疲労試験機(100Hz)、超音波疲労試験機(20kHz)から取得した100億サイクルまでの高応力比側ギガサイクル疲労特性を明らかにしている。
腐食データシートとしては、「大気曝露試験片に生成したさびの断面写真集」と、全国16カ所で実施した大気環境下での直接曝露試験データや環境データを収めた「腐食データシート NO.6」が発行された。
「アロイ718母材、溶接継手の宇宙関連材料強度データシート(No.28)」は、アロイ718板材の母材、EB溶接継手、TIG溶接継手に関するデータを掲載している。
NIMSの構造材料データシートは、機械や構造物の強度設計をする際に、設計応力の設定や材料を選択するために用いたり、材料の劣化、余寿命の判断基準にしたりと、産業界で長く活用されてきた。今回発行されたデータシートも、それぞれの領域において広く活用されることが期待される。
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