喫煙習慣に関連する遺伝因子と病気の発症リスクとの関係を解明:医療技術ニュース
理化学研究所は、バイオバンク・ジャパンに参加した日本人約16万人の遺伝情報を使った大規模なゲノムワイド関連解析により、喫煙習慣に関連する日本人特有の7カ所の感受性領域を新たに発見した。
理化学研究所(理研)は2019年3月26日、バイオバンク・ジャパンに参加した日本人約16万人の遺伝情報を使った大規模なゲノムワイド関連解析(GWAS)により、喫煙習慣に関連する日本人特有の7カ所の感受性領域(遺伝子座)を発見したと発表した。さらに、11種類の病気の発症リスクが遺伝的に相関していることも明らかにした。理研生命医科学研究センター チームリーダーの鎌谷洋一郎氏らと、東京大学、藤田保健衛生大学の共同研究による成果となる。
同研究グループは、2012年に喫煙習慣と個人の遺伝子配列との関係について、約1万7000人の日本人集団を対象とした結果を報告している。今回は、その約10倍となる16万人の遺伝情報と、喫煙に関わる4項目の情報(喫煙歴の有無、喫煙開始年齢、1日当たりの喫煙本数、現在の喫煙状況)を用いてGWASを実施した。
その結果、1日当たりの喫煙本数(多い/少ない)に関連する遺伝子座を5カ所、喫煙歴の有無に関連する遺伝子座を1カ所同定した。これら6遺伝子座のうち4つは、初めてゲノムワイド水準で喫煙との関連が示された領域となる。また、男女別で同様にGWASを行ったところ、3遺伝子座を新たに同定した。発見した7遺伝子座をイギリスのUK Biobankのデータで確認すると、日本人特有の領域であることが分かった。
今回の喫煙習慣のGWAS結果と、理研で過去に実施した43種類の病気のGWAS結果を合わせ、喫煙習慣と病気の各組み合わせにおける遺伝的背景の共有関係を調べた。その結果、喫煙習慣と心血管疾患やぜんそく、慢性閉塞(へいそく)性肺疾患など11種類の病気が遺伝学的に相関していることが分かった。中でも、喫煙本数と後縦靱帯(じんたい)骨化症の遺伝学的相関は同研究で初めて明らかになった。
今回の成果は、喫煙習慣やそれに起因する病気の予防など、喫煙関連遺伝子情報を活用する精密医療(プレシジョン・メディシン)への応用が期待できる。なお、研究で利用したバイオバンク・ジャパンのサンプルの遺伝情報は一般公開され、世界中の研究者が利用可能になるため、さらなる研究成果につながることが考えられる。
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