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AIが生み出す電力不足をAIで解決する、AIが生み出す変化とはモノづくり最前線レポート(2/2 ページ)

国内製造業の設計・開発、製造・生産技術担当役員、部門長らが参加した「Manufacturing Japan Summit(主催:マーカスエバンズ)」が2019年2月20〜21日、東京都内で開催された。プロセス製造のプレゼンテーションの1つとして、長瀬産業 NVC室 室長の折井靖光氏が「デジタルトランスフォーメーション時代のマニュファクチャリングの新潮流」をテーマに、AIが製造業に与える影響などを説明した。

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AIが招く電力不足

 一方で、このままデータ量が増え、それに合わせてAIの活用が広がると、電力が不足すると予測される。データ量は2025年には163ZBに膨張。2015年には既に、全世界のデータセンターで消費する電力は英国1カ国の電力使用量に等しかった。このままでいくと2020年には2016年の4倍(1973TWh)の電力需要となり、この数字は原発280基が必要となるという試算も出ている。

 電力がボトルネックになっているが、低消費電力化に向けては2つのシナリオがあるという。1つは「AI at the Edge」(エッジ側のインテリジェント化)。もう1つは「Brain inspired Devices」(人間の脳を模倣した新しいデバイスを作る)だ。

 「AI at the Edge」は、センサーのデータをそのままクラウドに上げるのではなく、エッジ側をインテリジェント化することで、エッジ側で非構造データを構造データに変えてクラウドに上げるという方法だ。それにより、クラウド側は今までのコンピュータ処理ですむことになり、エネルギー効率が高くなる。

 「Brain inspired Devices」は、半導体そのものの消費電力を下げようという取り組みだ。IBMのWatsonは200kWの電力を使っていたが、人間が同じことをやろうとした場合、20Wの電力ですむ。人間の脳のような、低消費電力のシステムにするため、人間の脳にあるSynapse(シナプス)を模した、自ら学習を行うチップの開発が全世界で進んでいる。

 また、6番目のパラダイムを考える上で重要となる新材料の発掘が求められており、その手段にAIを使うという動きがある。IBMでは各業種の壁を越えた基礎研究コンソーシアム「IBM Research Frontiers Institute」(RFI)を設立し、量子コンピューティング、新素材、ハイパーイメージング技術などを含む4つの領域の研究に取り組んでいる。日系企業では、長瀬産業が、JSR、ホンダ、日立金属、キヤノンなどと共に参加しており、その中の「マテリアルディスカバリー」というプロジェクトでIBMと共同で研究を進めている。

 IBMによると、世の中に知られている材料は10の9乗(10億)あるという。一方、知られていない材料は10の62乗存在しているといわれている。この大きな数字の中から、AIによって次世代半導体の新素材に適した素材を見つけようとするものだ。考え方としては2つあり、1つはAIが素材に関する膨大な文献やデータを読み込み、データを理解、体系化したうえでユーザーが求める新材料を提案する「コグニクティブアプローチ」である。もう1つは、膨大な物質の化学構造と物性値の関連性を学習し、ユーザーが求める物質の「化学構造式」を示す「アナリティクスアプローチ」というものである。このシステムはIBMが構築し、長瀬産業はさまざまな材料メーカーに対して、このシステムを提供するプラットフォームサービスを考えているという。

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