AIが生み出す電力不足をAIで解決する、AIが生み出す変化とは:モノづくり最前線レポート(1/2 ページ)
国内製造業の設計・開発、製造・生産技術担当役員、部門長らが参加した「Manufacturing Japan Summit(主催:マーカスエバンズ)」が2019年2月20〜21日、東京都内で開催された。プロセス製造のプレゼンテーションの1つとして、長瀬産業 NVC室 室長の折井靖光氏が「デジタルトランスフォーメーション時代のマニュファクチャリングの新潮流」をテーマに、AIが製造業に与える影響などを説明した。
国内製造業の設計、開発、製造・生産技術担当役員、部門長らが参加した「Manufacturing Japan Summit(主催:マーカスエバンズ)」が2019年2月20〜21日、東京都内で開催された。プロセス製造のプレゼンテーションの1つとして、長瀬産業 NVC室 室長の折井靖光氏が「デジタルトランスフォーメーション時代のマニュファクチャリングの新潮流」をテーマに、AI(人工知能)が製造業に与える影響などを説明した。
第3次AIブーム
現在は第3次AIブームが到来しているといわれている。折井氏は第3次AIブームのベースとして「データ量の爆発(ビッグデータ)」「ネットワークの進化」「アルゴリズムの進化」「ハードウェアの劇的な進歩」の4つの技術革新を挙げる。
「データ量」については、2010年に全世界で生み出されるデジタル情報の総量が年間1ZB(ゼタバイト)を突破したが、2020年には44ZBに達する見通しだ。これだけデータ量が増える背景にはモノのインターネット(IoT)がある。従来は人がデータを作り出していたが、現在は機械やセンサーが人間に代わってデータを作るようになった。2020年には全データ量の42%を機械やセンサーが作り出す(2005年で11%)時代になると予想されている。
しかし、この膨大に生み出されるデータの中で、企業で利用されているデータは、従来のコンピュータで管理しやすい構造化データのみで全体の約2割にすぎないという。データ全体の約8割を占めるのは非構造化データだが、今後はさらにこの割合が拡大すると予測されている。この非構造化データをAIはそのまま処理できることから、現在AIの導入が急速に進んでいるのだ。
「ネットワーク」については、通信速度の上昇が大きなポイントとなる。センサーが作ったデータはさまざまなところに蓄積されるが、多くはワイヤレス通信を経由してクラウド環境に蓄積されることになる。現在はその通信帯域や速度などが課題となり、利用したくてもできない場合や状況が存在する。そのブレークスルーとして期待されているのが第5世代移動通信システム(5G)である。5Gは、2019〜2020年にかけて導入される見通しだが、最高伝達速度10Gbpsと現行LTEの100倍のスピードがある。
そのため、リアルタイムでの遠隔のロボット操作や手術などが可能となる。また、多数同時接続の問題も解決されることになる。各センサーにIPアドレスを持たせる必要があるが、IPv6アドレスでは約340澗(1澗は10の36乗)個が接続可能となり、この点では問題なさそうだ。この数は1兆人が毎日1兆個使い捨てても1兆年は問題ない数字だという。「ここまでくるとIPアドレスについてはまず心配ない。あとは5Gを待つだけだ」(折井氏)。
「アルゴリズム」については、ディープラーニング(深層学習)の採用により、エラー率が大幅に改善された。人間の画像認識でのエラー率は5%程度といわれているが、ディープラーニングを活用した場合は3%台であり、人間の能力をはるかに超えるようになったといえる。
「ハードウェア」ではムーアの法則がコンピュータ発展の第5のパラダイムと位置付けられたが、折井氏は「6番目のパラダイムシフトを考えないとAIを支える半導体が出てこない」と課題を示す。半導体メーカーではEUV(極端紫外線)という新しい光源に代えた能力の高い半導体露光装置の開発に取り組んでいる。台湾の半導体メーカーであるTSMCはロードマップを発表しており、EUVの導入について2019年前半を予定している。また、韓国のSamsungが7nmプロセス製造技術を完成するなど、大手半導体メーカーがハードウェアの開発競争でしのぎを削る状況が続く。
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