IoTを活用して競技用小型ヨットの帆走性能を向上させる実証実験:組み込み採用事例
ヤマハ発動機と富士通は、IoTを活用してセーリング競技用小型ヨットの帆走性能を向上させる実証実験を開始した。富士通が開発したセンサーでヨットの傾きや速度、針路のデータを可視化し、ヤマハ発動機のヨット開発に活用する。
ヤマハ発動機と富士通は2019年3月11日、IoT(モノのインターネット)を活用してセーリング競技用小型ヨット「470(ヨンナナマル)級」の帆走性能を向上させる実証実験を開始した。実証実験は、静岡県の浜名湖にて同年4月30日まで実施する。
実証実験では、艇体の各部に装置を取り付け、取得したデータを富士通のクラウドサービスで解析し、ヨットの傾きや速度、針路のデータなどを可視化する。装置は富士通が開発したもので、艇体の姿勢を計測する9軸センサー(加速度、ジャイロスコープ、地磁気)や、艇速、位置、針路を計測するGPSセンサーを搭載している。
可視化されたデータを基に、パフォーマンス向上に必要となる調整項目を抽出し、ヨットの帆走性能と選手のセーリングスキル向上に活用する。また、富士通は、さまざまな分析結果を数値やグラフ、海上地図などの形式でPCやスマートデバイスに表示するアプリケーションを開発し、ヤマハ発動機へ提供する。
実験帆走を重ねることにより、艇体構造、マスト(帆柱)、セール(帆)などのヨットのチューニングに加え、選手の動作が艇速へ与える影響を把握して、ヨットがより高いパフォーマンスを発揮できるような最良のチューニングを導き出す。
両社は、今後、選手が操作するセールや選手の身体の動きについてもデータを取得する。ヤマハ発動機は、同実証実験で得た知見やノウハウを生かし、より優れた帆走性能を持つ470級ヨットの開発を目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ヤマハ発動機唯一のフェローはインテル出身、2030年に向けデジタル改革に挑む
ヤマハ発動機がIoTやAIに代表されるデジタル戦略を加速させようとしている。このデジタル戦略を推進しているのが、インテル出身であり、同社唯一のコーポレートフェローでもある平野浩介氏だ。平野氏に、ヤマハ発動機のデジタル戦略について聞いた。 - ヤマハ発動機が「万能型の知能化プラットフォーム」を構築へ、NVIDIAと協業
ヤマハ発動機は、研究開発中の製品群の自動化や知能化に向けてNVIDIAと協業する。今後は、NVIDIAの組み込み機器向けGPUコンピューティングシステム「Jetson AGX Xavier」などを用いて、あらゆる製品に展開可能な「万能型の知能化プラットフォーム」を構築する方針だ。 - ヤマハ発動機のスマート農業基盤「YSAP」、ドローンや無人ヘリコプター活用に特化
ヤマハ発動機と国際航業、トプコン、ウォーターセルの4社は、農業用ドローンや無人ヘリコプターによる農薬散布、施肥の作業や運航のデータを管理するヤマハ発動機のソフトウェアサービス「YSAP」の提供に向けて協業を開始すると発表した。 - 船舶の自動化に向け、「3D-LiDAR」技術搭載の自動運航船を開発へ
パイオニアと東京海洋大学は、船舶の自動化に向けて、MEMSミラー方式の小型センサー「3D-LiDAR」を活用した共同研究契約を締結した。人為的要因による海難事故を抑止し、海運事業の労働環境の改善、生産性向上を目指す。 - 船舶の自動航行をMRとAIで実現するJRCS、マイクロソフトはHoloLensで陸海空制覇
JRCSと日本マイクロソフトは、MR(複合現実)やAI(人工知能)などを活用して海運・海洋産業の働き方改革を推進するプロジェクト「JRCS Digital Innovation LAB」を開始する。JRCSは、同プロジェクトで開発する遠隔トレーニングや船舶の自動航行サービスなどを中核とするデジタルイノベーション事業を拡大する方針。 - 陸の王者トヨタ、海の王者ヤマハ発動機に挑む
すいません。編集後記の内容よりもこのタイトルを先に思い付きました。