OPC UAの技術進化、Pub-Sub通信やセキュリティ技術など実用面強化:いまさら聞けないOPC UA入門(3)(2/2 ページ)
スマート工場化など工場内でのIoT活用が広がる中、注目度を高めているのが「OPC UA」である。本稿では、OPC UAの解説を中心に工場内ネットワークで何が起きようとしているのかを紹介する。第3回となる今回は、セキュリティや新たな技術など、OPC UAの機能面での先進動向を解説する。
TSN対応やマシンビジョンとの連携強化も
この他、Pub/Sub over TSNやOPC Visionなどの新たな技術なども計画されている。TSN(Time Sensitive Networking)は、イーサネットをベースにしながら時間の同期性を保証しリアルタイム性を確保できるようにしたネットワーク規格である。特徴として、物理層などはそのままに、時刻同期や優先的に通すデータを制御する機能などを加えることができ、リアルタイム性の確保が可能である点などがある。OPC UAと組み合わせることで、よりOT領域との連携が進むことが期待されている。
さらに、マシンビジョンとの融合による「OPC Vision」なども計画されている。ただこれらの技術を活用しようとした場合、OPC UAに関する知識だけではなくTSNやMachine Visionの知識や、実際に組み込む際に必要となるハードウェアやソフトウェアも理解しておく必要があり、幅広い技術知識が必要になる。
OPC UAへの対応方法
最後にOPC UAへの対応方法について紹介する。OPC UA対応を行うには、一般的には専用のハードウェアを使用するか、OPC Foundationが提供するOPC UA StackもしくはSDK(Software Development Kit)を活用してOPC UAを装置に組み込むという2つの方法がある。
OPC UA対応ゲートウェイやPLC、産業用PCなどのハードウェアを使用することは早期にOPC UAの対応を行うことが可能となる。
一方で、OPC FoundationのOPC UA Stackを活用すれば、初期投資費用をかけずにOPC UAを装置に組み込むことなどが可能となる。ただ、開発を行う際に人件費がかかる点やOPC UAのバージョンアップへの追従などのメンテナンス体制が必要だ。また、OPC UAはHow(通信手段)を定義しているために、OPC UAの仕様書は他の通信プロトコルの仕様書に比べ難しい記載となっているためにしっかりと内容を理解する事が必要となる。開発が完了した後にOPC Foundationが提供するCTT(Compliance Test Tool)を使用してOPC UA通信のテストを行う必要もある。
SDKを使用する場合は、購入時に費用が掛かる。ただ、開発にかかる人件費などを減らすことが可能となる他、SDKはOPC UAのバージョンアップに追従することも多く、保守などをうまく活用することで継続的にOPC UAを組み込んだ装置の開発が可能となる。これらの特徴などを見極めつつ、機器の開発を進めていくことが必要である。
(連載終わり)
筆者紹介
大釜亮介(おおがま りょうすけ)
株式会社マクニカ 戦略技術本部 先行技術開発統括部 IP開発部 IP2課 課長
日本最大級の技術商社であるマクニカでは、主力の半導体製品、ネットワーク製品販売に加え、IoT/AIソリューション事業やIP(Intellectual Property)販売事業なども展開している。IP事業の主力の1つが産業機械向けIPで、OPC UAに関してもさまざまな知見を持ち、ソフトウェア開発キットである「OPC-UA Server SDK」などを販売している。
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