軟性内視鏡とロボット技術を融合した手術支援システムを開発:医療機器ニュース
慶應義塾大学は、軟性内視鏡とロボット技術を融合させた、軟性内視鏡手術システムの非臨床試作モデルを発表した。小さな切開孔または口・肛門からの挿管で体の奥や管腔内に到達し、繊細な操作ができる。
慶應義塾大学は2019年2月8日、軟性内視鏡とロボット技術を融合させた、軟性内視鏡手術システム(Flexible Endoscopic Surgical System:FESS)の非臨床試作モデルを完成させたと発表した。同大学医学部 教授の北川雄光氏を中心に、メーカーとの産学連携体制で開発を進めたものだ。
FESSは、直径5mmの軟性ロボット処置具2本ないし3本と直径8mmの3Dカメラ1本、これらを体内に導入するための軟性オーバーチューブからなる手術動作部と、内視鏡と処置具を遠隔操作するための操作部から構成される。
執刀医はコンソールのモニターで内視鏡画像を見て、直観的に精密な操作ができる。術式によっては、既存の汎用デバイスを併用可能。持ち運べる小型軽量のユニットで、ベッドサイドへの設置やベッドレールに取り付けられるため、ロボット手術専用手術室は不要だ。
内視鏡には、脂肪に隠れた臓器の構造を可視化し、重ねて表示できる3D近赤外蛍光観察機能を搭載。本機能は、可視光映像と近赤外蛍光映像を重ね合わせて表示でき、臓器表面の色調や形の情報に加えて、通常光では見えない脂肪に隠れた重要な臓器を確認しながら手術を進められる。
FESSは体表の1つの小さな切開孔または口・肛門からの挿管で体の奥や管腔内に到達し、繊細な操作ができる利点がある。これにより、体表を大きく切開せざるを得ない患部、または腹腔鏡手術が困難であった膵臓がんなどの患部に対し、より低侵襲で安全な手術が可能になるという。
今後は、2020年代半ばの発売を目標に、産学連携体制での取り組みを加速していくとともに、器具が臓器に触れた感じが医師の手に伝わる力触覚機能を追加し、安全性をより高める研究開発も進めていくとしている。
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