微細手術に適用可能な低侵襲手術支援ロボットを開発:医療機器ニュース
東京大学は、複数の大学や企業とともに、脳神経外科などの微細手術にも適用できる低侵襲手術支援ロボット「スマートアーム」を開発した。経鼻内視鏡手術のような高度で困難な手術に、手術支援ロボットが適用される可能性が広がる。
東京大学は2019年1月11日、脳神経外科などの微細手術にも適用できる低侵襲手術支援ロボット「スマートアーム」を発表した。同大学大学院工学系研究科 教授の光石衛氏らの研究グループが、複数の大学、企業との共同研究により開発した。
現在の手術支援ロボットは、その多くが腹部などの比較的広い部位を対象とし、直径8mmのロボット術具が主に使用されている。スマートアームは、狭く深い部位の微細手術を対象とし、より細い径のロボット術具や微小センサー、術具同士あるいは生体との衝突を自動で回避する制御システムなどを開発すること、それらを1つのロボットとして統合することを目指して、研究が進められた。
スマートアームは双腕で、産業用ロボットアームをベースにしている。高山医療機械製作所、東京大学などが新たに開発した駆動機構により、先端が屈曲する直径3.5mmのロボット術具を搭載。この術具は、東北大学、九州大学、東京大学が開発した微小な力センサーを備える。アーム部分を覆うセンサー付きカバーはデンソーが開発したもので、人との衝突を検知して自動で停止する機能を持つ。
また、スマートアームは医師がロボットに直接触って操作するが、そのユーザーインタフェースは名古屋大学が開発したものだ。さらに、一般的な低侵襲手術支援ロボットのように、遠隔操作が可能なユーザーインタフェースも東京大学が開発しており、術具同士や術具と生体との衝突を自動で回避しながら操作できる。
スマートアームの開発にあたっては、センサー付きの精巧な人体モデル「バイオニックヒューマノイド」の脳神経外科手術用モデル「バイオニック・ブレイン」を活用した。同モデルを用いることで微細手術の課題を把握し、ロボット評価を医工が連携して進めた結果、3年という短い期間で構想からシステム統合までを成し遂げ、プロトタイプを早期に開発できた。
さらに、バイオニック・ブレインを用いて、スマートアームが経鼻内視鏡手術において、脳脊髄を包んでいる硬膜を縫合可能であることも確認した。経鼻内視鏡手術は、開頭手術では難しい、脳の下部にある下垂体や頭蓋底にアプローチできる術式で、開頭手術に比べて傷が残らず、脳への侵襲も低い。
スマートアームには世界最高水準の技術が集約されており、今回の成果によって、経鼻内視鏡手術のような高度で困難な手術に、手術支援ロボットが適用される可能性が広がる。また、開発された要素技術はそれぞれが極めて高度なものであり、医療分野以外へも積極的に展開していく予定だという。
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