金属3Dプリンタ製部品の市場は2兆円、日本が強みを発揮するには:3Dプリンタニュース
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2019年2月8日、金属積層造形プロセスや機能性化学品製造プロセスについて、最新動向や課題をまとめたレポート「TSC Foresight」を発表した。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2019年2月8日、各技術分野の最新状況や技術課題などをまとめたレポート「TSC Foresight」における、金属積層造形プロセスや機能性化学品製造プロセスの調査結果を発表した。
同レポートはビジョンや技術課題を産学官で共有し、連携や技術の融合を促進するためのもの。これまでに30のテーマに関してレポートを発行している。発行に合わせて記者向けに説明会を開き、NEDO 技術戦略研究センター(TSC)でナノテクノロジー・材料ユニットに所属する井関隆之氏が金属積層造形プロセス(金属3Dプリンタ)の課題について説明した。本稿では金属積層造形プロセスに焦点を当ててレポートの概要を紹介する。
2030年の市場規模は2兆円
金属3Dプリンタは、従来の加工では困難な形状や造形を実現することができる。現在は航空機向けで導入が始まり、一部の金型で適用が進みつつある段階だ。今後、さまざまな分野の製造現場で導入が増え、金属3Dプリンタ本体、金属粉末材料、出力した造形品の市場がそれぞれ拡大していく見込みだ。
2030年の市場規模は、金属3Dプリンタ本体が2017年比5.3倍の6500億円、金属粉末材料は2016年比45〜59倍の5000~6500億円、出力した造形品の市場は2兆円にまで成長するという。金属3Dプリンタで出力した造形品の2030年の市場規模を業種ごとに見ると、金型や工具が8000億円、医療が5600億円、エレクトロニクスが4000億円、航空宇宙が1100億円、ロボットが1000億円と見込まれている。
これに対し、ラジエーターやターボチャージャーなど自動車部品、航空機や自動車、建材などの補修部品では、金属3Dプリンタの活用は、先述した市場ほどは伸びない。金属製自動車部品は市場全体の規模が3.4兆円なのに対し、金属3Dプリンタで生産する部品は600億円程度にとどまる見込み。補修部品は市場全体が4兆円だが、金属3Dプリンタによる造形部品は210億円となる見通しだ
品質とコストに課題
金属3Dプリンタをモノづくりで活用するには幾つかの課題がある。1つは金属3Dプリンタ本体と金属粉末材料のコストだ。現状では金属3Dプリンタ本体は1台1億円以上、金属粉末材料は1kgあたり数万円となっている。これについて井関氏は、「3Dプリンタ本体や材料だけをコスト低減の対象とするのではなく、製造プロセス全体、航空機の燃費など完成品としてみた時のメリットなど、広い視点でコストを抑えられるか検討する必要がある」とコメントした。
もう1つの課題は、常に均一の品質で造形ができるようにすることだ。金属3Dプリンタで出力したものは、造形中に内部に欠陥が生じる場合がある。また、積層造形であることから、表面の仕上がりは従来の金属加工技術に劣る。
井関氏は日本が取り組む金属積層造形の理想形について、「内部の欠陥をなくしながら、従来の金属加工技術と同等の表面仕上げを実現すること」だと述べた。従来と同等の表面仕上げの実現に関しては、既に工作機械メーカー各社が切削加工機に金属3Dプリンタの機能を付加した複合機を提案している。内部の欠陥に対しては、NEDOの2019年度新規事業の中で取り組む。金属蒸気や金属飛沫(スパッタ)、温度分布、粉末材料の敷き詰め方などを観測、計測し、どのような条件が影響して内部の欠陥が発生するのか解明する計画だ。さらに、造形中の高度なモニタリングと、そのフィードバックに合わせて造形を制御するための要素技術を開発する。
現在、3Dプリンタ本体の市場はドイツ企業がリードしており、特許は中国が、論文は米国と中国がシェアを握る。日本ならではの強みを発揮することで、今後の日本勢のシェア拡大に期待するとしている。
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