三菱自動車が取り組むスマート工場、止めない生産ラインをどう実現するか:スマート工場EXPO2019(2/2 ページ)
スマート工場・スマート物流を実現するためのIoTソリューションなどを一堂に展示する「第3回スマート工場EXPO」(2019年1月16日〜18日、東京ビッグサイト)で、世界の先端工場で進むスマート工場化をテーマとしたセミナーが開催。「スマート工場の実現によるモノづくり競争力の強化」と題して、三菱自動車工業理事水島製作所長の北尾光教氏が講演した。
具体的なスマート工場化への取り組み
工場の製造システムは、情報の収集と活用をベースに考えると、3つの階層に分かれている。最下層がデータを収集、フィードバックする層であり、中階層は集めたデータを処理する領域、最上層が分析したデータを見ながら統括する領域となる。
現在は熟練者が全部のデータをコントロールし顧客の要望に合わせた生産形態をとっている。「このうちの最上層(の運営)は難しく、まだ時間がかかる領域だ。しかし、部分的な分析などはできるところから積極的に進めている」(北尾氏)という。
これらのスマート工場化への取り組みで水島製作所が目指すのは止まらない生産ラインである。生産稼働の見える化、要因の分析、リアルタイムフィードバックを組み合わせることで、止まる前に異常に気付き、止まってもすぐに復旧できる工場の実現を目指している。
ラインの見える化については、生産機械やロボットなど各設備から生産情報を収集し、管理センターで稼働状況をリアルタイムに把握する。
真因追求では、各ロボットや設備の数年間にわたる作動状態、電流値、振動、温度などのデータを蓄積し、ロボット停止の要因を解析する。例えば、これらの解析の結果、減速機については電流値が最も影響を及ぼすことが分かったという。そのため、「電流値を見ながら、異常値が出れば交換するという予防保全に用いている」(北尾氏)。さらに、振動の数値なども加味して総合判断を行うためAIの導入を決めたという。
これらの情報活用が増大化する中で、さらなる情報活用のためのインフラ整備についても拡充している。フィードバックされるデータ量の増大に伴い、データの伝達経路の拡充にも取り組んでいる。
また、作業の効率化に向けて音声認識の活用なども進めており、音声によるデータの入力を可能とした。さらに、タブレットの活用で画像により情報伝達を容易に実現できるようにしたことで、設備の停止時間の短縮を図っている。
品質確保のためのトレーサビリティー
いっそうの強化を進めているのが、トレーサビリティー確保である。素材、プレス時点から組み立て工程、塗装工程などを一元化したデータ管理を行うようにしている。この他、部品のプレス割れについても、プレス時の過重変動により、判定できるようにした。これにより、プレス割れした部品の流出を防いでいる。
完成した自動車は、最終工程で完成車検査を行い、その上で走行工程を行い出荷する。このデータも電子化して保存しており、データをモバイル端末に入力することで品質情報のリアルタイムでの共有化を進めてきた。現在は検査工程で発見した不具合を、すぐに発生元にフィードバックして不具合に対応するようにするなど(e-Checkシステム)、不具合を工程改善に直結できるようにしている。
これら工場内で扱う情報量は膨大なものとなっているが、情報処理基盤についても強化している。情報量の増加に対応するため、データ全てをサーバに入れるのではなく、データ保存層(会社)、仕分け分析層(工場)、データ収集条件反射層(生産現場)、フィールド層(同)の4層に分けて処理し、限定的な必要性のあるデータだけを上位層に上げる仕組みとしている。これにより、無駄な情報保存や通信コストなどを低減し、必要な情報だけを記録し活用できるようにしている。
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