電動車いすをMaaSの一部に、呼ぶと自律走行で迎えに来てくれる:CES2019
電動車いすベンチャーのWHILLは2019年1月7日、消費者向けエレクトロニクス展示会「CES 2019」(2019年1月8〜11日、米国ネバダ州ラスベガス)において、電動車いす向けの自動走行技術「WHILL 自動運転システム」を出展すると発表した。また、同システムは「CES 2019イノベーションアワード」を受賞した。同賞は、優れたデザインやエンジニアリングのコンシューマーエレクトロニクス製品に贈られる。
電動車いすベンチャーのWHILLは2019年1月7日、消費者向けエレクトロニクス展示会「CES 2019」(2019年1月8〜11日、米国ネバダ州ラスベガス)において、電動車いす向けの自動走行技術「WHILL 自動運転システム」を出展すると発表した。また、同システムは「CES 2019イノベーションアワード」を受賞した。同賞は、優れたデザインやエンジニアリングのコンシューマーエレクトロニクス製品に贈られる。
WHILL 自動運転システムは、電動車いすの自動走行・自動停止機能と、複数の自動走行対応電動車いすを管理、運用するシステムで構成されている。電動車いすの最高速度は時速6km。病院や空港などの施設で、長距離の歩行が困難な高齢者や身体が不自由な人の呼び出しに応じて、電動車いすを自動走行で向かわせることで移動を支援する。また、介助者なしに電動車いすで移動できるようにすることで、施設内の回遊を促進し、消費の拡大にもつなげられると見込む。
WHILLでは、電動車いすの自動走行化をMaaS(Mobility-as-a-Service、移動手段をサービスとして利用すること)の一部と位置付ける。
開発の背景には、“旅客の権利”を保護する上でのコスト増大がある。欧州では、乗客の乗降に必要な支援を事業者が無償で行うよう法令で義務付けている。その結果、航空業界では車いすによる介助や利用後の車いす回収のコストが年々増大している。大規模な空港では、年間7000万人の搭乗者のうち1%強が移動や乗降で支援を必要とする。そうした搭乗者は世界の主要な空港で年間10%のペースで増加し、対応のための予算も拡大している。
WHILLでは、施設側が自動走行対応の電動車いすを導入する際のハードルを下げることに注力した。まず、電動車いすがインフラに依存せず現在地の推定を行えるようにした。電動車いすには左右の手すり部分にステレオカメラを、車いす後部にLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)を搭載し、SLAM(環境地図作製と自己位置推定)技術によって障害物を回避しながら移動する。自動走行用の施設内の地図も作製する。後方用センサーとしてLiDARを有望視しているが、現状では高額な部品のため、使用するセンサーについては今後も検討を続ける。
Wi-Fiやビーコンなどの屋内測位によって電動車いすの位置を把握する場合、精度が十分でない点や、施設の広さに応じて機器の設置数が増えることが課題となる。そのため、基本的にはインフラに依存しない自律走行を重視するが、人混みで自動走行用地図の特徴点を見つけにくいケースでは施設側と相談しながらインフラの設置も検討する。
同社の製品を含め、既存の電動車いすには自動停止機能はついていない。「さまざまな施設で電動車いすの導入を提案すると、自動ブレーキ機能がないことを不安視する声が多かった。安心して利用してもらうために自動停止機能を採用した」(WHILLの開発者)。
現在、オランダのスキポール空港や英国のヒースロー空港、米国のラガーディア空港などでWHILL 自動運転システムの実用化に向けた協議を進めている。日本では、小田急グループなどとMaaSでの連携を始めた。無人状態で走行する電動車いすの扱いについて道路交通法など法規制は定められていないが、2020年をめどに公道での実用化を目指す。
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