食塩の過剰摂取で高血圧が発症する脳の仕組みを解明:医療技術ニュース
自然科学研究機構は、食塩の過剰摂取によって体液中のナトリウム(Na+)濃度が上昇すると、脳内のNa+濃度センサーであるNaxがこれを感知し、その結果、交感神経が活性化して血圧上昇が起こることを解明した。
自然科学研究機構は2018年11月30日、食塩の過剰摂取により、高血圧が発症する脳の仕組みを解明したと発表した。体液中のナトリウム(Na+)濃度が上昇すると脳内のNa+濃度センサーであるNaxがこれを感知し、その結果、交感神経が活性化して血圧上昇が起こる。同機構生物学研究所 教授の野田昌晴氏らの研究グループが明らかにした。
研究グループでは、Na+濃度の上昇に応じて開口するNaチャンネルのNaxに着目。これが血圧制御に関係するNa+濃度センサーとして働いているかどうかを検討した。
実験では、野生型マウスに大量の食塩を与え、体液中のNa+濃度の上昇とそれに伴う血圧上昇を確認した。一方、Nax遺伝子欠損マウスでは、体液中のNa+濃度が同程度上昇しても、血圧の上昇は全く起こらなかった。
次に、脳脊髄液のNa+濃度を上昇させたところ、野生型マウスでは交感神経の活性化と血圧上昇が起こったが、Nax遺伝子欠損マウスでは見られなかった。このことから、Naxが体液中のNa+濃度上昇を感知し、交感神経の活性化を通じて血圧を上昇させている脳内センサーであることが分かった。
また、Naxが感知したNa+濃度上昇のシグナルが交感神経の活性化につながる仕組みについて、分子および神経回路ネットワークレベルで調べた。その結果、Naxによる血圧上昇は、視床下部室傍核(PVN)にシグナルを伝える終板脈管器官(OVLT)ニューロンの活性化を介して起こっていることが明らかになった。
Na+濃度と血圧上昇をつなぐ脳内の仕組みの詳細を明らかにしたことで、高血圧の新しい治療法開発につながることが期待される。
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