経済低成長の日本を救うのはAI――人間との協働がカギ:人工知能ニュース
アクセンチュアは2018年12月12日、東京都内で「人間とAI(人工知能)」をテーマとした記者説明会を開催。人間とAIの目指すべき協働の姿と、そこで求められる人間のスキルや役割について意見を語った。
アクセンチュアは2018年12月12日、東京都内で「人間とAI(人工知能)」をテーマとした記者説明会を開催した。アクセンチュア米国本社でCTO(最高技術責任者)兼CIO(最高イノベーション責任者)を務めるポール・ドーアティ氏が登壇し、人間とAIの目指すべき協働の姿と、そこで求められる人間のスキルや役割について意見を語った。
ドーアティ氏はまず、人々がAIと聞いてイメージする「AIが人間を制圧するような物理的な脅威となるのではないか」「AIが人間の仕事を奪うのではないか」「AIが普及する社会で、このままのビジネスアプローチを続けていいのか」といった3つのポイントを紹介した。
この3つのポイントに対し、ドアーティ氏は「AIは人間が設計しコントロールするものだ。AIに対する過度な心配は、本来有用な存在であるAIの導入を遅らせてしまう」「AIによって失われる職業もあるが、AIの開発や管理、学習を行う新たな職種も誕生することでむしろ雇用は増加する」とAI活用における正の面を説明。
このように、AIがIoT(モノのインターネット)やクラウドコンピューティングなど他のテクノロジーにも作用するビジネス変革の主役となっている一方で、AIの活用が進む社会では「ビジネスに対するアプローチを変革しなければならない」(ドアーティ氏)と主張する。
人間とAIの協働はデジタル企業に限らず全ての企業において、これまでより高い業務パフォーマンスを得られるとし、ドアーティ氏は人間とAIの協働を実現するために「ビジネスを再創造する」「新たなアプローチで仕事に臨む」「責任あるAIを創造する」ことを推奨した。
労働人口が減少する日本、AIは救世主となるか
続いて、アクセンチュアでデジタルコンサルティング本部 アクセンチュア アプライド・インテリジェンス日本統括を務める保科学世氏が登壇。保科氏は「労働人口が減少している日本では、AI活用を推進することが経済成長のけん引役」と言い切る。
2035年時点における各国の経済成長率(GVA:粗付加価値)に関して同社が予測したベースラインシナリオ結果によると、日本は先進12カ国の中で最低となる0.8%の経済成長にとどまる。一方で、AIの活用が十分に進んだ「AIシナリオ」の予測結果ではベースラインシナリオの約3倍となる2.7%とされており、同社ではAI活用が日本の経済成長を左右するという見方をしている。
しかし、グローバルと比較して日本人はAIに対する理解や抱いているイメージが弱いとする「残念な調査結果」(保科氏)があるとする。この調査結果によると、日本人はAIと協働するための知識やスキル習得意識が低い、かつAIに対して漠然とした不安があるという。
保科氏は、日本は質の高いサービスの提供に長けていること、そして日本の製造業はAIの手足となるロボット技術に優れておりシェアも高いことを挙げ、AIの活用が進む土壌は存在すると語る。
日本企業がすべきことについて、保科氏は「AIを自社内で開発するだけでなく、外部のAI技術を活用するコラボレーションを行うべき。これを両立させる会社こそ素早く成長しているという調査結果がある」と提案している。
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