救急車の運用を最適化するシステムの有効性を確認:医療機器ニュース
NTTは、消防庁消防大学校消防研究センター、NTTデータとともに、救急ビッグデータを用いた救急自動車最適運用システムの有効性を確認したと発表した。
NTTは2018年11月26日、消防庁消防大学校消防研究センター、NTTデータとともに、救急ビッグデータを用いた救急自動車最適運用システムの有効性を確認したと発表した。
三者は、同年2月〜2021年3月までを研究期間とし、救急需要と気象条件などの関係性を踏まえた救急需要を予測するなど、救急車の運用最適化を目指して、共同研究を進めている。
今回、救急車が現場に到着するまでの時間や搬送先を決定する時間を短縮する技術、医療機関搬送時に安全性を確保する技術に関して有効性を確認できた、以下の3つのテーマを発表した。
テーマ1は、傷病者の発生確率が高い場所への救急隊最適配置だ。同検証は名古屋市消防局の協力を得て実施した。まず、時系列データの学習に有効なリカレントニューラルネットワーク(RNN)を用いて市全体の救急需要を予測。これと過去の救急搬送実績に基づいた確率分布を組み合わせて、救急需要の期待値の分布を算出し、そこから各救急隊の最適配置を求めた。過去の搬送事例や環境データなどを用いて考案したアルゴリズムと、現実に即したシミュレーションにて実データと比較検証したところ、平均現場到着時間を短縮できた。
テーマ2では、搬送先医療機関のリアルタイムな受け入れ可能性について予測した。過去の救急搬送事例において、受け入れ病院を選定するまでの経緯をランキング学習によって学習し、受け入れ優先度の推定アルゴリズムを考案した。同アルゴリズムを用いて、複数の病院の受け入れ優先度を推定した結果、過半数の事例で、最終的に搬送先となった病院を最初の選定先として示すことができた。このテーマは、仙台市消防局の協力のもとで検証した。
テーマ3は、傷病者を安全に搬送するためのルート提示だ。ごみ収集車の走行データ(慶應義塾大学が測定)を活用した藤沢市内の段差データベースから、段差警告システムのプロトタイプを作成。走行実験により、同システムの有効性を確認した。
これら3つのテーマについて、三者はフィールドでの実証を想定しつつ、予測精度をさらに高めていく。テーマ1は2018年12月から、テーマ2と3は次年度以降に、今回の成果を適用した実証実験を予定している。
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