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クリエイティブな仕事こそAIに奪われる? AIと人間の望ましい関係とはJIMTOF2018(2/2 ページ)

「第29回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2018)」(2018年11月1〜6日、東京ビッグサイト)の特別講演として、情報学研究所教授、総合研究大学院大学教授、東京工業大学特定教授、人工知能学会前会長・顧問の山田誠二氏が登壇。「人と機械の“調度よい”関係を探る」〜AI活用の現状と今後の可能性〜」をテーマにHAI(ヒューマンエージェントインタラクション)、IIS(知的インタラクティブシステム)の開発状況など、これからのビジネスにおける可能性について紹介した。

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クリエイティブな仕事からAIに奪われる

 完全自動運転の難しさの一方で、AIのビジネスへの浸透は期待できると山田氏は述べる。「人間の仕事をタスクで分割すると、その一部はAIにより代替される(役割分担)ことは明らかだ」(山田氏)。これにより、本質的に人間がやるべき仕事というものが(労働の境界線)が明確となってくる。「従来の労働の時空間、内容単独の定義から新しい分類として『AIで代替可能か否かという定義』が生まれ、それを考えないと個人、会社の仕事の最適化、効率化ができなくなってくる」と山田氏は人間とAIの関係について語る。

 その際、山田氏の私見では「クリエイティブな仕事からまずなくなる」としている。これは、「新しいアイデアとみえるものは、既存アイデアの組み合わせにしかすぎないため」(山田氏)だという。

 一般的にはクリエイティブな領域が人間に残るとされているが「さまざまなものを探索して組み合わせることはAIの得意領域である。クリエイティブな仕事こそAIに任せると成果が上がるのかもしれない」と山田氏は考えを述べている。

 逆に「例えばコンビニの店員の仕事はなくならない。それは、店員はレジ打ちだけをやっているわけではなく、おでんの仕込みや、清掃、ごみ処理など多種多様な作業をその場その場で判断してこなしているためだ。これらはAIやロボットには対応が難しい」と山田氏は述べる。このように、仕事が丸ごとAIに代替されることは不可能で、タスク(仕事)の一部が代替されるという方向に向かうと予測されている。

人とAIの望ましい関係とは

 こうしたことから、山田氏は今後の人とAIの現実的で望ましい関係について「人間とAIが得意分野を補い合い協調して問題解決にあたることが目指すべき方向だ」と強調した。これが、「インタラクティブAI」という、AIと人間が協調することを目指したシステムであり、このシステムにより人単独、AI単独に仕事を行うことよりも高いパフォーマンスが期待できる。

 この理論については、山田氏はHAI(Human-Agent Interaction)という研究を進めている。ここでは擬人化エージェント(例として初音ミク)と人間の間でやりとりする情報の設計などに取り組む。具体的には、エージェントのデザイン(アピアランス、外見、身体)、表出デザイン(人間に伝えるべき情報、音を出したり表情で示したりなど情報の表現方法)、関係のデザイン(信頼関係の構築、リーダーフォロワー関係の構築)などである。このうち、一緒に働く人間との関係を深めるためにはロボットの顔の表情などの表現は、非常に重要になるということが実験などにより分かっている。

 また、ロボットとAIに関しては「強化学習(reinforcement learning)の実用化」「HRI(ヒューマンロボットインタラクション)」「人間(歩行者)のモデリング」などの項目が現在研究対象として注目を浴びているという。強化学習は基本的行為の実行戦略(どの状態でどの行動を実行すべきか)を経験から学習する、というもの。有名なアルゴリズムとしてはQ学習などがあるが「現状では膨大な試行錯誤が課題だ」(山田氏)としている。

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