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クリエイティブな仕事こそAIに奪われる? AIと人間の望ましい関係とはJIMTOF2018(1/2 ページ)

「第29回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2018)」(2018年11月1〜6日、東京ビッグサイト)の特別講演として、情報学研究所教授、総合研究大学院大学教授、東京工業大学特定教授、人工知能学会前会長・顧問の山田誠二氏が登壇。「人と機械の“調度よい”関係を探る」〜AI活用の現状と今後の可能性〜」をテーマにHAI(ヒューマンエージェントインタラクション)、IIS(知的インタラクティブシステム)の開発状況など、これからのビジネスにおける可能性について紹介した。

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 「第29回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2018)」(2018年11月1〜6日、東京ビッグサイト)の特別講演として、情報学研究所教授、総合研究大学院大学教授、東京工業大学特定教授、人工知能学会前会長・顧問の山田誠二氏が登壇。「人と機械の“調度よい”関係を探る」〜AI活用の現状と今後の可能性〜」をテーマにHAI(ヒューマンエージェントインタラクション)、IIS(知的インタラクティブシステム)の開発状況など、これからのビジネスにおける可能性について紹介した。

得意分野と不得意分野を抱えるAI

 AIは1956年のダートマス会議で定義されて、研究開発が始まり、これまで約20年周期でブームが訪れてきた。現在は2010年代に入って始まった「第3次AIブーム」の中にある。第3次AIブームでは、機械学習(マシンラーニング)が中心技術となっており、米国の大手IT企業を中心に応用が進んでいる。それらの成果が今回のブームをけん引しているという。この背景には、人工知能技術に理論的な大きな進展があったというよりも「ビッグデータ解析や計算機のパワーが向上し、さらに安価になってきたことが大きい」と山田氏は述べている。

 機械学習には応用数学に基づいたパターン認識を活用するものがあり、これにはSVM(サポートベクターマシン)などのアルゴリズムがある。ただ、現在大きな注目を集めているのは、人間の脳と近いアプローチで開発された、NN(ニューラルネットワーク)を使うものだ。NNは50年以上にわたって研究が進められており、このNNの中の1つがディープラーニング(深層学習)である。

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情報学研究所教授、総合研究大学院大学教授、東京工業大学特定教授、人工知能学会前会長・顧問の山田誠二氏

 現状でのAIの得意、不得意をみると、得意分野は「複雑だが静的(static)で閉じた(closed)世界」である。ここで言う閉じた世界とは、例えば、囲碁、将棋、チェスのような(完全情報)ゲームである。その他、サイバー空間や物理的には屋内環境など変化のない環境となる。これは「閉じた世界は外の世界とは情報のやりとりが無いので、基本的に起こり得ることを全て予測することが可能となる。事前に対応できるプログラム、ルールを規則として描き尽くせることが一番大きい」(山田氏)という。

 逆に「動的(dynamic)で開いた(open)世界、常識、膨大な情報世界」などはAIの不得意な分野となる。例としては、人間の行動を含むもの(行動経済学、認知バイアス)、物理的な変化が伴うもの、屋外環境が不得意分野となる。

 このうち「常識」については、物理的常識(物理現象、自然現象)、社会的常識(社会通念、モラル)、膨大な量の知識(書き尽くせない、機械学習も非現実的)などで、例えばゲームでもポーカーは、はったりや、駆け引きが必要なことからAIには苦手分野に入る。

 屋外環境で動的な変化が連続して生まれる自動車の自動走行もAIにとって苦手な領域だといえる。米国のハイウェイで道を横切るトレーラーに追突した事故の例でみると、自動走行車の目となるカメラはトレーラーに太陽光が当たり、その反射光でホワイトアウトが発生し車体を確認できなかった。また、ミリ波レーダーも大きな物体を障害物として認識できなかったという。事故現場はハイウェイであり、屋外だがある意味で閉じた空間であるといえる。それにもかかわらず、書き尽くせない出来事が発生し事故が起こった。こうしたことから「完全自動運転は非常に難しい。特に日本のような道路事情では何がいつ飛び出してくるか分からないことから、特に難しくなるだろう」と山田氏は完全自動運転の難しさについて指摘する。

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