クルマの稼働率が上がる自動運転時代、半導体でも要求高まる耐久性と信頼性:車載半導体
ON Semiconductor(オン・セミコンダクター)は2018年12月5日、東京都内で記者向けに事業説明会を開き、自動運転に向けた各種センサーの取り組みを発表した。
ON Semiconductor(オン・セミコンダクター)は2018年12月5日、東京都内で記者向けに事業説明会を開き、自動運転に向けた各種センサーの取り組みを発表した。
同社 バイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーで、インテリジェントセンシンググループ オートモーティブソリューションディビジョンのロス・ジャトウ(Ross Jatou)氏は、オン・セミコンダクターがハイダイナミックレンジ(HDR)を強みに高いシェアを占めていることから説明を始めた。
日本の調査会社によるイメージセンサーの市場調査によれば、2018年のシェアはオン・セミコンダクターが67.6%、次いでソニーが12.8%となる見通し。オン・セミコンダクターは6割強のシェアを維持し続けている。
2019年末から2020年初めにかけては、イメージセンサーの最新製品「AR0820」が量産モデルに採用されることも決まっている。垂直画角を拡大して画素数は830万画素となり、140dBのHDR機能を持つ。車載カメラの夜間の検知性能を高めるとともに、基板面積を25%小型化する。「これまでの弱点だった」(ジャトウ氏)という暗電流は、直近6カ月で大幅に改善したとしている。
同社はイメージセンサー以外にも、超音波ソナーやミリ波レーダー、LiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)に必要となる製品もそろえている。LiDAR向けには、医療向けなどで実績のあるシリコン光電子増倍素子(Silicon Photomultipliers:SiPM)、シングルフォトン・アバランシェダイオード(Single Photon Avalanche Diode:SPAD)を活用する。従来技術と比較して、同じレーザー出力で3倍の距離で検知が可能になるという。
ハードウェアだけでなく開発に必要なツールも
また、ジャトウ氏は、ハードウェアだけでなく自動運転技術の実用化に必要なツールやソフトウェアを提供する方針であることも語った。イメージセンサーの夜間の検知可能距離について、イメージセンサーの画素数ごとにシミュレーションで比較するツールや、車載カメラのパラメーターを調整して検知性能を検証するソフトウェアなどのニーズが高まっているという。画像の改ざんなどセキュリティ対策として、イメージセンサーとプロセッサの接続の安全性を検証するツールも提供している。これらのツールは自社開発だが、ISOなど規格がからむ分野では社外と連携している。
今後、自動運転で必要になる環境認識用センサーは、信頼性を確保することの重要度が増すとジャトウ氏は説明した。「クルマの使い方が変わると稼働率が上がるだろう。そうなれば、センサーが働く時間も増える。クルマが屋外にある時間が長くなれば、イメージセンサーに焼き付きが発生し、焼き付きの残像によって誤検知が起こるかもしれない」(同氏)。カラーフィルターやレンズ、シリコンへの工夫により、十分な耐久性を持たせていくとした。
機能安全規格への対応も充実させている。あらゆる不具合を洗い出して、故障や不具合のモードをデータベース化して自動車メーカーやティア1サプライヤーに納入している。半導体の不具合が車両全体に影響を及ぼすのを防ぐとともに、不具合が出るごとに繰り返すロードテストの負担を軽減するとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 自動運転時代に向け車載CMOSセンサーの画素数が2倍に、LEDフリッカーも抑制
オン・セミコンダクターは、次世代の先進運転支援システム(ADAS)向けとなるCMOSイメージセンサーの新製品「AR0231AT」を発表。画素数が230万と従来品の2倍になるとともに、高度なハイダイナミックレンジ(HDR)機能と、LEDを使う信号機や交通標識の撮像を難しくするLEDフリッカーの抑制機能も備える。 - オンセミがIBMからミリ波技術を買収、車載向けセンサーと設計拠点を拡充
オン・セミコンダクターは、IBMから車載用ミリ波技術を取得した。これにより、オン・セミコンダクターは車載向けのカメラとミリ波レーダーのセンサーフュージョンに対応できるようになる。センサーフュージョンの設計開発拠点を英国に新設することも明らかにした。 - ボッシュの次世代車載カメラ、イメージセンサーはオン・セミコンダクターに
オン・セミコンダクターは、先進運転支援システム(ADAS)で用いる次世代カメラ向けイメージセンサーのサプライヤーとしてRobert Bosch(ボッシュ)に選ばれたことを明らかにした。 - HDRとLEDのちらつき抑制を同時に実現、ソニーの車載向けイメージセンサー
ソニーは、HDRとLEDのちらつき抑制の両機能を同時に利用できる車載用高感度CMOSイメージセンサー「IMX390CQV」を製品化した。HDR機能と、LEDのちらつき抑制を同時に使用できるのは「業界初」(ソニー)としている。 - デンソーがソニー製イメージセンサーを採用、夜間の歩行者検知が可能に
デンソーは、運転支援システムなどに用いられる車載用画像センサーにソニー製イメージセンサーを採用することで、夜間の歩行者認識が可能になったと発表した。 - 夜間に物体までの距離と形を同時に検知、250m先まで対応
パナソニックが、このほど発表したTOF(Time Of Flight)方式の測距画像センサーの採用技術について説明。夜間に250m先までの検知に対応し、離れた場所にある物体までの距離や形状を詳細に認識することができるようになった。2019年までに機能サンプルの提供を開始し、2021年から車載用も含めて広い用途で提案活動を開始する。 - 車載や監視カメラを高画質に、東芝が「無限高画質」開発
東芝がスマホや車載カメラなどに用いられる小型のイメージセンサーで、大型イメージセンサー並みの画像を実現できる「無限高画質」技術を開発した。