ホンダ「PCX」に電動モデル、既存のボディーに電動パワーユニットを収めEV化:電気自動車(2/2 ページ)
ホンダは2018年11月29日、電動バイク「PCX ELECTRIC(エレクトリック)」のリース販売を開始すると発表した。原付2種のスクーター「PCX」をベースに、新開発の電動パワーユニットを搭載した。バッテリーは、着脱可能なリチウムイオン電池「モバイルパワーパック」を使用する。
2個のバッテリー、直列と並列を切り替える
動力源は、2個のモバイルパワーパックを直列で接続した電圧96Vのシステムだ。走行中は2個のモバイルパワーパックを直列につなぎ、充電中は並列に接続を切り替えるシステムとした。走行中はパワーコントロールユニット(PCU)がメインコンタクターを駆動させ、2個のモバイルパワーパックが直列接続となる。モバイルパワーパックは1個では電圧48Vだが、直列にすることにより電圧を上げ、消費電流を抑える。その結果、ハーネスが大径化することも回避できた。
充電時は、PCUがリレーを駆動させてモバイルパワーパックを並列接続とし、放電状態の異なる2つのバッテリーをそれぞれ完全に充電することができる。PCUとモバイルパワーパック、リレー、メインコンタクターなどのシステムは、CAN通信で連携する。
充電時間は、車両にモバイルパワーパックを搭載した状態で車体のプラグを家庭用電源に接続した場合、満充電まで6時間かかる。モバイルパワーパックを車体から取り出し、専用充電器にセットして充電した場合は、4時間で満充電となる。バッテリー残量がある場合に“チョイ足し”で充電することも可能だ。
PCXエレクトリックは四輪車にない低電圧のシステムとなるため、部品の流用が難しく電動パワーユニットは専用設計となった。PCXエレクトリックの開発責任者である本田技術研究所 二輪R&Dセンターの三ツ川誠氏は「PCXエレクトリックはグローバル展開するため、UN規格への適合を前提に開発してきた。求める品質に届く部品がなかなかなく、専用設計でコストも高くなった。今後、部品のUN認証対応が進むことで、低コスト化も図れるのではないか」と説明した。
モバイルパワーパック、もともとのコンセプトは
モバイルパワーパックは、2017年の「CEATEC JAPAN」で発表したシステムだ。パナソニックと共同で開発した。二輪車向けの駆動用バッテリーのみの用途で開発されたものではない。
使用後の充電や充電済みモバイルパワーパックとの交換を行う充電ステーション「エクスチェンジャー」と併用して、小規模な太陽光発電や風力発電、水力発電で得た電力を蓄える。小さい“バケツ”に電力をためて持ち出し、二輪車の駆動用バッテリーや家庭での電源として使うことで、再生可能エネルギーを効率的に地産地消することをコンセプトとしている。
今回、日本でのPCXエレクトリックのリース販売に際して、充電ステーションのエクスチェンジャーは導入されない。しかし、パナソニックと共同で、インドネシアにおいてPCXエレクトリックとエクスチェンジャーを用いたバッテリーシェアリングの実証実験を2018年12月から2年間実施する計画だ。充電の待ち時間や走行距離に対する不安を解消し、電動モビリティーの普及を後押しする。また、フィリピンでも余剰電力活用システムの実証実験でPCXエレクトリックを活用する。
着脱式のバッテリーを搭載する電動バイクは、海外の二輪車メーカーも展開する。台湾のGogoroやKYMCOは、電動バイクを投入するだけでなく、台湾を中心に着脱式バッテリーの充電ステーションの整備を始めている。ヤマハ発動機はGogoroと協業し、電動スクーターのOEM供給を受ける他、Gogoroのバッテリー充電ステーションを活用する。なお、Gogoroの着脱式バッテリーもパナソニック製だ。
GogoroやKYMCOの着脱式バッテリーはそれぞれが独自に開発したもので互換性はない。日本国内においては、二輪車メーカー4社で足並みをそろえ、電池パックの標準化と共通利用を進め、電池やインフラ整備のコストを下げて普及につなげる方針だ。
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