汗のpHなどを高感度に常時計測、ウェアラブル向けの貼れるセンサー:医療機器ニュース
大阪府立大学は、フレキシブルフィルム上にCCD構造を作製し、汗を含む溶液のpH値をリアルタイムかつ高感度で計測可能なフレキシブルpHセンサーを開発した。ばんそうこうのように皮膚に貼り、汗中のpH値を常時計測できる。
大阪府立大学は2018年11月8日、フレキシブルフィルム上に電荷結合素子(CCD)構造を作製し、その構造を用いて、汗を含む溶液のpH値をリアルタイムかつ高感度で計測可能なフレキシブルpHセンサーを開発したと発表した。また、これにフレキシブル温度センサーを搭載して、皮膚温度と汗中pH値の同時計測を可能にした。同大学大学院工学研究科 准教授の竹井邦晴氏らの研究グループによる成果だ。
研究ではまず、デバイス構造を工夫することで材料に不純物を添加せずにCCD構造を形成。トランジスタ材料と電極のショットキー接合障壁を電圧により調整する構造を取り込み、世界で初めて電荷転送型のフレキシブルpHセンサーを作製した。
同時に、皮膚温度を計測する温度センサーも開発。酸化スズとカーボンナノチューブの混合溶液を塗布形成することで、安定した温度センサーの作製に成功した。約1週間の長期温度計測において、±0.3℃以下の誤差で計測が可能であることを確認した。
さらに、高感度pHセンサーと温度センサーを集積させることで、汗のpH値と皮膚温度の情報をリアルタイム計測する実証試験に成功。皮膚温度とpHセンサーの温度補正を同時に安定して実施可能になった。反応層のシリコン酸化膜を他の材料に置き換えれば、グルコース、ナトリウム、カリウムなどを同様の原理で高感度計測できるという。
同技術により、市販のpHセンサーと比べ感度が4倍以上と高くなり、また柔らかいセンサー構造によってばんそうこうのように皮膚に貼ることで汗中のpH値を常時計測可能になった。
この技術を発展させることで、装着感なく日常的に健康状態の変化を計測できる技術へとつながり、糖尿病の予防・診断、熱中症予防など、予防医学や健康管理のための日常健康管理ツールへの展開が期待される。今後は実用化に向け、電源、無線回路、プロセッサ回路などを開発していく。
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