再生目指す東芝が示した新たなIoT戦略とその勝算:製造業IoT(3/3 ページ)
東芝は技術戦略説明会を開催。東芝が目指す独自のIoTアーキテクチャ「Toshiba IoT Reference Architecture」を発表し、同フレームワークを生かして4つのIoTサービスを展開する方針を示した。
東芝が持つ強みとは
このCPSの中で東芝が持つ強みについて山本氏は1つとしてエンジニアリング領域での強みを示す。「数多くのサイバーベンダーがIoTに取り組んでいるが、CPSにおいてモノからデータを取るだけであればそれほど難しくない。しかし、サイバーからフィジカルの環境にアクションを戻すというのが非常に難しい。もともとマシンやシステムがどういう設計思想であり、どういう保守履歴があるのかなどのマスターデータがなければどうしようもないからだ。ここを持つ点がサイバーベンダーとは異なる東芝の最大の強みである」と山本氏は述べる。
さらに、もう1つの強みが、サービスを展開する中で重要になる事業領域である。「日本政府が発表した『Connected Industries』の中で『ものづくり・ロボティクス』『自動走行・モビリティサービス』『バイオ・素材』『スマートライフ』『プラント・インフラ保安』という5つの重点領域が発表されている。東芝はもともとこれらの領域での事業展開を行っており、すでに多くの知見がある。まずはこれらの領域でO&M(オペレーションメンテナンス)サービスを展開することになるだろう」と山本氏は語る。
4つのサービススイートを展開、国際標準化も
今後に向けては、まずIoTビジネスを構築する中で、4種類の「IoTスイート」を用意する方針である。具体的には「インフラ」「製造」「エネルギー」「物流」の4分野向けをパッケージ化したものを用意する。
さらに、これらで得られた知見やTIRAなどでの実績をIICなどを通じて発信し、世界標準としての採用を目指すという。山本氏は「このIoT領域における世界の技術開発の中での日本の位置付けは低い。技術の進展に貢献する意味でも、国際標準に反映するための活動を進めていく」と考えを述べている。
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