東芝、逆転のシナリオは「第4次産業革命」にあり:製造マネジメントニュース(1/3 ページ)
経営危機の東芝は、新たに「今後の東芝の姿」を発表。メモリ事業の完全売却や海外原発事業整理後の成長のシナリオについて示した。
命綱は「第4次産業革命」か――。経営危機を迎えている東芝は2017年3月14日、海外原子力発電(原発)関連などリスク事業を再整理後の成長戦略について示した。
当面のリスク回避後の展望が見えない
東芝では、原発関連のグループ会社であるウェスチングハウス(WEC)を通じて買収した米国CB&I ストーン&ウェブスター(S&W)において、大幅なのれん代の減損が2016年12月に発覚。のれん減損による損失額の見込み値は、営業損益ベースで7125億円となり、債務超過の可能性が指摘されている。
これを回避するために、利益の稼ぎ頭であったメモリ事業を4月1日付で「東芝メモリ」として分社化※)する。さらに、「東芝グループの債務超過解消」と「メモリ事業の成長に必要な経営資源の確保」の2つの目的で、完全売却の可能性を含む50%以上の株式売却を行うため、現在入札を行っているところである。
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さらに、2016年度中に東芝プラントシステム、ジャパンディスプレイ、東芝機械、シグマパワー、東芝医用ファイナンスの株式売却を行う他、青梅工場や米アーバインキャンパスなどの不動産売却を行い、約1600億円の売却益を得る計画である。これにより、債務を解消し当面の成長への設備投資の原資を確保する方針だ。
ただ、2015年度に売却した東芝メディカルシステム※)や、今回の東芝メモリは、どちらも利益を稼ぎ出していた優良事業であり、東芝の事業の柱となっていたものだった。切り売りによって、これらの柱を失った後の東芝の姿が見えず、市場などからも不安を招いていた中で今回、あらためてこれらの事業整理後の東芝の再成長のシナリオを示した。
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再成長のカギとなるのは6分野、4事業
東芝では2016年度と2017年度を「危機的状況」と位置付け、リスク遮断や財務基盤の回復、組織運営の強化などに当てる方針。そして2018年度からは再成長の軌道に乗せるという考えだ。
東芝では2016年3月に発表した経営方針の中で「ストレージ」「社会インフラ」「エネルギー」を3本柱とし、これらを支える共通基盤として「ICT」を位置付ける4事業に注力していく方針を示していた。しかし、ストレージの中心を担うメモリ事業は売却するため、基本的には「社会インフラ」と「エネルギー」を軸とした事業体制に作り変えることになる。
具体的には「社会インフラ」と「エネルギー」がカバーする、「リテール&プリンティング(東芝テック領域)」「ビル・施設」「鉄道・産業システム」「公共インフラ」「電力流通」「発電」の6分野をターゲットとする。さらにこれらの事業を支える基盤として「電子デバイス」と「ICTソリューション」を位置付ける。
東芝の2016年度の売上高見込みの合計値は5兆5200億円だが、その内メモリ事業が8766億円、WECが6800億円であり、これらを整理できたとすると残りの3兆9634億円が“新生東芝”の売上高となる見込みだ。一方営業利益については、WECが7170億円の損失を発生させている一方で、新生東芝領域は1416億円の利益となっており、同領域では安定している。
東芝 代表執行役社長の綱川智氏は「WECによる7000億円以上の損失がなければ、メモリ事業と新生東芝領域を合わせて約4100億円の営業利益となっていた。これは東芝における過去最高クラスの営業利益である。メモリ事業はなくなるが残された領域で成長できる」と述べている。東芝では“新生東芝”領域で、2019年度までに売上高4兆円以上、ROS(売上高経常利益率)5%を目指すとしている。
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