東芝のメモリ事業子会社は「東芝メモリ」、2016年度内の売却は諦める:製造マネジメントニュース
東芝は、フラッシュメモリを中心とするメモリ事業を「東芝メモリ株式会社」として2017年4月1日に分社化する。原子力発電事業の大幅な減損による債務超過に苦しむ同社はメモリ事業を売却する方針を示しているが、この売却は2016年度末までに行わず「2017年度のなるべく早い段階での決定を目指す」(同社)という。
東芝は2017年2月24日、フラッシュメモリを中心とするメモリ事業の分社化に関わる吸収分割契約を締結したと発表した。これに併せて、同年1月27日にメモリ事業の分社化方針を発表した際に未定としていた情報も開示。原子力発電(原発)事業の大幅な減損による債務超過に苦しむ同社はメモリ事業の売却で資本増強する方針を示しているが、この売却は2016年度(2017年3月)末までに行わず「2017年度のなるべく早い段階での決定を目指す」(同社)という。
メモリ事業を扱う新会社の名称は「東芝メモリ株式会社」で、3月30日開催予定の臨時株主総会の承認決議を経て、4月1日に設立される。4月1日時点での資本金は100億円で、代表取締役には東芝 代表執行役副社長の成毛康雄氏が就任する。
東芝メモリが継承するのは東芝のストレージ&デバイス社のメモリおよび関連製品(SSDを含み、イメージセンサーを除く)の開発、製造、販売事業とその関連事業になる。同事業の2015年度通期の売上高は8456億円、営業利益は1100億円。資産7537億円(流動資産3109億円、固定資産4428億)、負債1614億円(流動負債827億円、固定負債787億円)を東芝から分割継承する。
第三者を介した譲渡プロセスはNG
東芝が2017年1月27日、メモリ事業の分社化と一部売却を発表した時点では、「(持分法適用会社とはしない)20%未満を基準として出資を受け入れる」(東芝 社長の綱川智氏)としていた(関連記事:選択肢がなかった東芝、虎の子のメモリ事業を分社化し株式20%売却へ)。
しかし2月14日に予定していた2016年度第3四半期決算発表は、原発関連のグループ会社であるウェスチングハウス(WEC)において内部統制の不備を示唆する内部通報があるなどさまざまな問題が明らかになり、1カ月間延期することとなった。原発事業による減損も大きく、2016年度末で営業損失は4100億円となり、株主資本についても1500億円のマイナスとなる見込みだ。
この厳しい状況を受けて、メモリ事業子会社の株式売却について「マジョリティー(過半数の株式)をキープすることはこだわらない。100%売却することもあり得る」(綱川氏)という方針に変えた(関連記事:なりふり構わぬ東芝、メモリ事業会社は完全売却へ)。
今回の発表文でも「今後のメモリ事業のさらなる成長に必要な経営資源を確保し、併せて当社グループの財務体質を強化するため、マジョリティー譲渡を含む外部資本の導入を検討しています」としている。
ただし、持分法適用にならない20%未満の株式売却ではなく、マジョリティー譲渡となると、売却先の企業によっては各国政府当局の審査と承認を得なければ、売却した金額を得て資本増強に当てられない。2016年度末の債務超過に対応するには間に合わない。
その一方で、2016年3月に行ったキヤノンへの東芝メディカルシステムズの売却のような第三者を介した譲渡プロセスは、日本の公正取引委員会から二度と行わないようにくぎを刺されている(関連記事:キヤノンの東芝メディカル買収、公取委が“渋々”承認)。
そこで今回は、2016年度末時点での債務超過は看過し、メモリ事業の株式売却を2017年度のできるだけ早い段階で決めて、早急に債務超過に対する手当を行うことにしたようだ。
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