理想のスマートファクトリーに近づけるため今必要なこととは:Connected Industries Forum 名古屋(2/2 ページ)
MONOistは2018年11月9日、名古屋市内で「Connected Industries Forum〜製造業のデジタル変革は『理想』と『現実』の両輪で実現せよ〜」を開催した。
セキュアなマイコンを提供
マイクロソフトは「インテリジェントクラウド、インテリジェントエッジ」を掲げ、エッジコンピューティングとクラウドの円滑な連携に注力している。日本マイクロソフトの鈴木氏は「ただのクラウドでは意味がなく、サービスとIoTに必要になる(ソフトウェアの)部品群を組み合わせていく」とする。
また鈴木氏は、IoTの課題として「つながる機器の1個にでも穴があればウイルスが入り込み被害が生じる。末端の機器をどうやって守るかが大きな課題だ。ソフトウェア側からはアプリで守ろうとしているが、ハード自体に穴があればどうするのか、アップデートは誰が行うのかといったことはあいまいになっている」ことを挙げた。そこで同社ではクラウドとエッジに加えてデバイスにも取り組んでおり、セキュアなマイコンを提供していくという。
データ収集が課題、最終目標はデジタルツイン
電通国際情報サービス(ISID)の深堀氏は「最終的には現場で得たデータをデジタルツインで戻していくのが重要だと考える」と語った。
深堀氏はスマートファクトリー実現のためのステップとして、データ収集による現場の見える化、分析や改善、実行と管理、最適化と自律化、デジタルツイン化を挙げた。その前段階として、「特にわれわれはステップ0を設けている。現場で取得したデータを評価しようというときに、日本ではほぼExcelや紙、または頭の中にあったりする。スマートファクトリーに取り組む前に、これをきちんとモデル化することが非常に大事になる」と述べた。
アフターサービス向け製品IoT導入サービスを提案
ユニアデックスの村上氏は製品のIoT化を提案した。メーカーは自社が提供する製品をIoT化することによって付加価値を生み出すとともに、製品のサービス化を狙うことになる。
だが現実には課題が多い。そもそも製品付加価値とは何かから始まり、IoT構築のコストや運用、セキュリティなどの課題もある。また利用企業が増えるまでには時間がかかりコスト回収がすぐにはいかない点もある。
そこでまず重視するべきは、自社製品を利用する企業とIoT化によってつながることだという。「まずは機能を限定してスタートし、利用企業やそこから出てくるニーズに応じて機能拡張を行うサービスモデルが適当だ。長い期間が掛かることも想定し、小さく始めて大きく育てられるような、柔軟性の高いIoTクラウドサービスの利用が有効になる」(村上氏)。
中小企業こそIoT導入が有効
マイクロリンクの久野氏は、IoTに関して中小企業から多く聞かれるニーズは「工場全体の稼働率を把握したい、管理者が外出先などからも確認できる、そして古い装置も管理したいといったことだ。先進的な企業になると、すでに生産性向上の効果については熟知しており、素早く活用できる環境を整えたいと考えている」と語った。
同社が実証を経て製品化したIoTサービスは、工場全体に渡って素早く展開、使用できるのが特徴だという。ON/OFF情報だけでも継続的に取得すればさまざまな情報を得られる。生産性向上に効果を発揮するといい、例えば「昨日と今日の個人の状態の違いを自分で見ることができるので、現場の人が自然と意識し、効率が上がる。ラインを増やすべきかといった経営判断の材料としても有効だ」(久野氏)という。
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