物流業界を救う自律搬送ロボットと群制御、パナソニックの現場改革への取り組み:協働ロボット(2/2 ページ)
パナソニックは100周年を記念して行う同社初の全社ユーザーイベント「CROSS-VALUE INNOVATION FORUM 2018」(2018年10月30日〜11月3日)を開催。その技術セミナーとしてパナソニック コネクティッドソリューションズ社 プロセスオートメーション事業部 ソリューション事業開発センター ロボティクス開発部部長の松川善彦氏が「現場プロセスイノベーションを実現する自動搬送ロボットソリューションの開発」をテーマに、物流におけるロボティクスの取り組み、自動搬送ソリューションの開発状況などを紹介した
複数ロボットを同時に動かす“群制御”
群制御システム(DOS)については、複数台のロボットの効率的な制御と周辺設備との連携を行うものだ。
群制御システムについて、パナソニック コネクティッドソリューションズ社 プロセスオートメーション事業部 ソリューション事業開発センター ロボティクス開発部部長の松川善彦氏は「われわれにとってロボット以上に大事な部分であると考えている」とし、重要性について訴えている。
具体的にはDOSには3つの特徴がある。1つ目は荷物の属性や位置に応じた効率的な配車や、渋滞、衝突の回避、電池マネジメントを行う「配車・運行制御」である。2つ目が、時間帯や曜日ごとの変動や急な荷物量の増減などのフレキシブルな運用にも対応する「フレキシブルな運用」。3つ目が、エレベーター、自動ドアなどとの連携も含めた効率化や非常時の対応を行う「周辺設備との連携」となる。
技術的に見ると中央制御型、分散制御型があるがパナソニックではこの両方のハイブリッド型を選択した。群制御サーバは目的地など大まかな指示のみ(大局的制御)で、ロボットが目的地に向かって自律移動(局所的制御)する。「このハイブリッド型には、全体の効率化ができる点、ロボット本体での計算量が多くないという点、実際の状況に応じた行動が可能となる点などのメリットがある」(松川氏)とする。
自動搬送ロボット進化の3つのポイント
自動搬送ロボットの開発の方向性は、顧客のニーズから得た新しい知見により「現場でより使いやすいロボット」を目指しているという。例えば、フォーク型搬送ロボットでみると「障害物検出、衝突防止」「自己位置推定」「パレットの自動把持」などの技術開発に取り組んでいる。
「障害物検出、衝突防止」は、機能安全対応センサーを用い、ソフトによらない安全停止を採用した。現場では、砂ぼこりや直射日光の差し込みによるセンサーの誤検知などが課題だが、それを現場で顧客と会話し、シミュレーターなどを活用して経路の効率的な変更など総合的に提案を行う。
「自己位置推定」は、車輪と床の滑りなどで蓄積する位置誤差の修正を行うもので、非常に重要な要素となっている。無軌道の搬送ロボットでは、LiDARを利用したスキャンマッチング、カルマンフィルター、パーティクルフィルターなどの技術があり、このうちパーティクルフィルターには、ロバスト性が高いというメリットがある。逆に計算の負荷が大きいというデメリットがあるものの、計算能力の向上により広く利用されてきた。
また「パレット自動把持」では、カメラによる方法とLiDARによる方法の2種類を研究開発している。カメラによる方法では、カメラで取得した画像でマーカを検出し、パレット位置を確認する。LiDARによる方法はLiDARでパレット形状を認識し、パレットの位置を検出し自動で把持する。
安全性については全ての技術開発のベースとなっており、従来はロボット側での安全が第一義だったが、今後は安全性と生産性を両立させるため、実際の運用で活躍しやすい姿を目指す。「遅く動かす」など多値制御による「止めない安全」「IoTによる見守り安全」「人と機械の協調」による共存を実現することに取り組んでいるという。
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