ファナックがFIELD systemで描く、スマートに“動かす”工場の実現:スマートファクトリー(2/2 ページ)
「CEATEC JAPAN 2018」(2018年10月16〜19日、千葉県・幕張メッセ)の基調講演にファナック代表取締役会長兼CEOの稲葉善治氏が登壇。「動き出したIoTによる知能化工場 〜FIELD system〜」をテーマに講演した。
スマートファクトリー化で重要になる「考える」力
工場内に存在する複雑な生産システムを制御するには、つないで、見える化し、そして「考える」ことが必要となるという。この考える部分にはAI(人工知能)を活用し、新しい生産システムの構築を推進する。
製造機械同士がつながるためのIoTシステムに加えて、ファナックではこれらのつながった機器によるデータを生かして各機器の知能化を推進。さらに、複数機器が共同で製造現場を最適化するため、ディープラーニングによる知能化機能なども開発中だとする。「この知能化が、IoTを進める上でのキーポイントとなる」(稲葉氏)という。
製造現場でリアルに使えるAI機能を採用し、人には難しい多次元の解析、曖昧な事象の見える化(定量化、定性化)、熟練者のスキルのデジタル処理、リアルタイム性の高い知能化を図っていく狙いだ。「ベテラン作業者が引退することで失われていく習熟した技術や技能の継承にも役立つ」(稲葉氏)とする。さらに、工場の知能化ではロボット、工作機械の生産工程において、効率を上げるために、1つ1つの機器が自立分散型に機能して、全体として機能的なシステムになりフレキシブルな生産システムの実現に取り組む。
また、コンピューティングに関しては「クラウドコンピュータという考えがあるが、現場で生産効率を上げるためには高速な処理が必要であり、またセキュリティの問題も出てくる。クラウドに上げる情報は最小限に留めるなど、クラウドに依存するのではなく、エッジコンピュータで対応することが重要だ」(稲葉氏)とエッジヘビー(現場重視)の姿勢を強調した。
セキュリテイに関しては、現場のノウハウ、生産状況や実績など、現場にとって重要な企業秘密が、サイバー攻撃を受けることにより、漏れる可能性も考えられる。そのため、重要なデータは現場において、現場で多くの処理してしまうことで、セキュリティの問題に対応する考えを示す。
さらに、稲葉氏は「クラウドに全ての情報を上げ、その返答を待っているのでは現場の安全面や即応性などで間に合わないことがある」とし、高速リアルタイム制御を行うためには「エッジコンピューティングが重要となる」とあらためて訴えている。そして、FIELD systemはERPやMESなどと組み合わせて使う、「エッジに特化したパッケージである」ことを強調した。
また、FIELD systemの大きな特徴である、オープンプラットフォームである点に関しては、アプリケーションおよび、各種機器との通信コンバーターを自由に作成できる利点を紹介。エッジへの指令、データの書き込みおよび収集したデータの時刻合わせ、容易なデータ分析などの機能を簡単に利用可能である他、メーカー間や新旧の世代間を超えた接続や連携が可能である点を訴える。既に500社のパートナーが一緒になって、他のOSやシステムとのデータ連携を行うなど、ソフトウェアもオープンにつながることを紹介した。
「考える」の先にある「動かす」の世界
さらに、FIELD systemではその先も描いている。稲葉氏は「『つなぐ』『見える』『考える』の次にくるのは『動かす』である。自動制御を担うということだ。『高効率に動かす』『高精度に動かす』『安全に動かす』『熟練者のように動かす』などを実現したい。これにより真のスマートファクトリーが実現することになる」と将来を展望している。
FIELDsystemは、国内は大手自動車メーカー、部品加工メーカー、工作機械メーカー、自社工場内への導入を進めている。現在は知能化工場の第一歩として、ラインやセル単位のPoC(Proof of Concept)レベルからだが、将来的には本格導入を目指す。また、2019年から同システムの販売を米国で開始する計画を示している。
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