工作機械がつながった先には何があるのか、JIMTOFが開幕:JIMTOF2018
「第29回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2018)」が開幕。「IoT オープニングディスカッション」として、主催団体会長の日本工作機械工業会会長の飯村幸生氏らが登壇し、「つなぐ」からその先の価値創出へと急ぐ必要性を訴えた。
「第29回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2018)」が開幕。「IoT オープニングディスカッション」として、主催団体会長の日本工作機械工業会会長の飯村幸生氏、日本工作機械工業会 副会長で技術委員長 稲葉善治氏、Industrial Value Chain Initiative(IVI)理事長の西岡靖之氏、ベッコフオートメーション代表取締役社長の川野俊充氏、経済産業大臣政務官 石川昭政氏が登壇し、「つなぐ」からその先の価値創出へと急ぐ必要性を訴えた。
「つながる」世界とその先にあるもの
JIMTOF2018は出展社数が1085社となり過去最多となっているが、キーワードの1つとして位置付けられているのが「つなぐ」という点である。これに対し政府の立場での取り組みとして石川氏は政府で進める「Connected Industries」での取り組みを紹介※)。業界や産業を越えてデータのやりとりが進められる仕組みを推進しており「オープン化の流れの中で協調領域を拡大していくことが重要だ」と石川氏は述べた。またその支援として、2018年6月に「生産性向上特別措置法」を施行し、国の保有するデータを活用できる枠組みなども作っているが「いまだに1社も認定を受けておらず、より多くの企業の参加を期待している」と呼びかけた。
※)関連記事:日本版第4次産業革命「Connected Industries」とは?
日本工作機械工業会の視点としては、飯村氏は「『つなぐ』というと、どうやってつなぐのかという『How』の観点で語られることが多いが、つないで何を改善するのかなど『What』の話が重要である。『つなぐ』領域は基本的には差別化につながらない協調領域であり、早く競争領域である『What』の領域に進まなければならない。データ駆動型ビジネスに進むために『What』に早く進めるようにハードルを下げる取り組みを工業会では進めていく」と述べている。
さらに、稲葉氏は「つなぐというのは目的ではなく既にできていることだ。見える化から知能化、スマートファクトリーへと発展させていかなければならない」と述べ、今回のJIMTOFの企画展示で70社300以上の機器を結んで見える化を実現させたことなどを紹介した。さらに稲葉氏が代表取締役会長 兼 CEOであるファナックが進める「FIELD system」などの現状などについても説明した。
進むプラットフォーム間の連携
製造現場のつながりを実現するためには、「FIELD system」を含むプラットフォーム間の連携なども重要になるが、経済産業省などが主導し、「FIELD system」や三菱電機などが推進する「EdgeCross」、DMG森精機などが推進する「ADAMOS」などの連携について西岡氏は紹介。「現場データの中で競争領域のものは守りつつ、協調領域でオープン化できるものについては、プラットフォームを越えて活用できるようにしていく。現在までに半年ほどの取り組みを進めてきており、2019年2〜3月頃には完成する計画である」と述べている。
これらの製造業のデジタル化の取り組みはドイツがインダストリー4.0などで先行しているが、ドイツの取り組みについて川野氏は「ドイツでもつなぐのは難しく技術課題などがあると認識されている。それに対応していくために標準化への取り組みに積極的に取り組んでいる。既存技術のマッピングや、現状では足りない技術などを分析して、複数企業が協力できる仕組み作っている」と述べている。
これらのさまざまな角度からの「つなぐ」動きについて、飯村氏は「つながることは製造業や機械メーカーが本来やりたいところではなく、協調領域である。つながるはより早く切り抜けて、競争力を高められる『What』の領域により早く入れるようにしたい」と述べていた。
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