ヒューマノイドロボットの最新モデル「HRP-5P」、人間と同じ重労働が可能:WRS2018
産業技術総合研究所は、ロボットの国際大会「World Robot Summit 2018」において、人間と同じ重労働が可能な人間型ロボット試作機「HRP-5P」を展示した。
産業技術総合研究所(以下、産総研)は、ロボットの国際大会「World Robot Summit 2018」(2018年10月17〜21日、東京ビッグサイト)において、人間と同じ重労働が可能な人間型ロボット試作機「HRP-5P」を展示した。
HRP-5Pは、産総研の知能システム研究部門 ヒューマノイド研究グループが開発した。同グループは、これまでもヒューマノイドロボットとして「HRPシリーズ」の研究開発を手掛けている。2015年に開催された「DARPA Robotics Challenge」に、災害対応ヒューマノイドロボット「HRP-2改」で参戦したことでも知られる※)。
※)関連記事:出場チームに聞く「DARPA Robotics Challenge」決勝戦の舞台裏(前編)、あれは本当に“惨敗”だったのか?
HRP-5Pの最大の特徴は、縦横に外形寸法が大きく、重量が10kg以上ある石こうボードやコンパネなどを両腕でハンドリングできることだ。単に石こうボードを持つだけでなく、平積みした状態から持ち上げられる。
HRP-5Pは身長182cm、体重101kgで、身長170cm、体重65kgのHRP-2改よりも大きく重い。しかし、HRP-2改に対して、関節の自由度数が、腰に1自由度、各腕部付け根に1自由度追加されて合計37自由度となっており、より人間に近い動作が可能になっている。また、高出力モーターの採用、駆動機構の冷却などにより、HRP-2改に比べて関節トルク、速度とも平均で約2倍に向上した。これらの改良により、前屈状態で作業を行ったり、その状態から立ち上がったりできるようになった。
これらの他、頭部に組み込んだカメラとLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)による周辺環境の3次元計測、深層学習(ディープラーニング)による作業対象物の検出なども可能になっている。
「人の作業を代替するさまざまなタイプのロボットが考案されているが、人を模したヒューマノイドロボットでなければ代替できない作業は必ず存在する。それらに対応する上で、HRPシリーズの開発は重要な役割を果たすだろう」(産総研の説明員)としている。
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