ロボットが人型である必要性とは――人間にとって最適なロボットデザインを考える:ロボットデザイナー園山隆輔氏が語る(1/2 ページ)
情報処理推進機構(IPA)は2013年11月13日、産学連携を推進するアキバテクノクラブとともに、「未踏交流会」の拡大版「ロボット特集 〜ロボットデザイン〜」を開催。本稿では、T-D-F代表の園山隆輔氏の講演「ヒト型×ロボット×デザイン」の内容を紹介する。
「ロボット」と聞くと多くの方が、人型のヒューマノイドロボットを想像するのではないだろうか。筆者もその1人だ。これは、おそらく漫画やTVアニメ、SF映画の世界で描かれてきた“人のカタチ”をしたロボットの印象が強いためだろう。
だが、そもそもロボットが人型である意味、必要性はどこにあるのか。
“robot”の語源とされる『robota(強制労働)』の意味が指し示す通り、“人間の代わり”にツライ作業を行う存在という意味合いからなのか、単に同じシルエットで“親しみやすい”からなのか、動きを“イメージしやすい(=コントロールしやすい)”からなのか……。
さらに、この“人間に似せる意味”の捉え方によっては、人気俳優が演じる某TVドラマのような人間そっくりなアンドロイドなのか、子ども向けTVアニメに登場するような巨大人型ロボットなのか、その外観も大きく異なってくる。
人に似せる意味とは何か、どこまで似せるべきなのか。そして、人間にとって最適なロボットのデザインとは何か――。
この疑問に対し、情報処理推進機構(IPA)は2013年11月13日、産学連携を推進するアキバテクノクラブとともに、「未踏交流会」の拡大版「ロボット特集 〜ロボットデザイン〜」を開催。ヒューマノイドロボット開発の最前線で活躍されているデザイナー、研究者、開発者などを講師に招き、“ロボットのデザイン”について、各人の考えが示された。
この中から本稿では、MONOist 組み込み開発フォーラムで、普段、ほとんど取り上げたことのない工業デザイン/ロボットデザインの話題に注目。T-D-F(T.Sonoyama Design Factory)代表の園山隆輔氏の講演「ヒト型×ロボット×デザイン」から、ロボットデザインに対する考え方を紹介しよう。
ロボットデザイナーが考える人型ロボットの条件
フリーランスで活動する園山氏は、デザイン事務所T-D-Fを京都に立ち上げ、これまで数多くの工業デザイン、ロボットの外観デザインを手掛けてきた。代表的なものとしては、川田工業の次世代産業用ロボット「NEXTAGE」、アールティの家庭用卓上ロボットアーム「NEKONOTE」、産業技術総合研究所(産総研)のヒューマノイド研究開発プラットフォーム「HRP-4」、東京大学のテレイグジスタンスロボット「TELESAR 2」などがある。
そもそも「デザイン」とは何か?
デザインの定義について、園山は「よく、美しく洗練されたフォルムや、アーティスティックな造形を作ること、あるいは“機能美”を追求・実現すること、と言われることがあるが、これは手段の話であり目的ではない」とし、デザインの本当の目的は「ユーザーとの『関係性』を構築することだ」(園山氏)と説明した。
例えば、何かのテクノロジーやサービスであっても、それが自分の生活や日常にどのように影響するのか、どのように良くなるのか、一目で分かるものでなければ欲しいとか、使いたいとは思われない。「これをはっきりさせること、つまり、“人との関係性をカタチ作ること”がデザインの一番の目的であり、大切な役割だ」(園山氏)という。
特に、ロボットのようなはっきりとした定義がないような存在は、何をしてくれるものなのか? それをデザインで示してあげる必要がある。「炊飯器やラジカセのように、既に人との関係性がはっきりしているものであれば、少々デザインで遊んでも成立するが、ロボットのような研究途上にあり、“これから世の中に出てくるもの”は、誤解を与えないようなデザインを採用し、人との関係性をはっきりと示してあげる必要がある」(園山氏)。
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