ロボットの正しい定義とは:次世代ロボット概論(1)(1/2 ページ)
ロボット社会はすぐそこまで来ている――あらゆる技術の集大成といわれるロボットだが、実はその定義はいまだ錯綜している。
ロボットとは?
ロボットは組み込みシステムの最たるものだ。と同時に、実はロボットの定義というのは、専門家の間でもこれといった明解があるわけではない。工学系の講義などでは「ロボットとは?」という議題で、あっという間に2時間が経過してしまうほどだという。
本連載をご覧の皆さんは、ロボットといわれて何を思い浮かべるだろうか。アニメやコミックの世界で描かれているような、ヒューマノイドロボットと呼ばれる種の、人間に近い知能を持った愛らしいもの(参照:画像1)を想像するかもしれない。
今回紹介する大場 光太郎氏(産業技術総合研究所)の講演中には、そうしたヒューマノイドロボットに加え、産業用途で使用されているロボットが紹介されている。それらのロボットは、私達が何となく描いているロボット像とは異なるかもしれない。しかしそうした産業用ロボットも含めて“ロボットとは?”という難題を一緒に考えていきたい。
連載の後半では、ロボットが将来、人間社会の中に溶け込んでいくために乗り越えなければならない、“現代社会におけるロボットの課題”についても触れていく。
ロボットの歴史
“ロボット”という言葉は、1920年にチェコの作家 カレル・チャペック(Karel Capek)が自身の戯曲『ロボット(R.U.R.)』の中でロボタ(robota)という言葉を使い始めたのが語源だといわれている。しかし、当時でいうロボットとは、“奴隷”という言葉から派生してきたもので、あまり良い意味ではなかった。
その後、1950年に米国のアイザック・アシモフ(Isaac Asimov)がSF小説『私はロボット』の中でロボット3原則を提唱し、日本においては、手塚 治虫の『鉄腕アトム』によってロボット=(イコール)人型に近い二足歩行ロボットというアニメ世界のイメージが定着した。1985年に開催されたつくば万博(茨城県)では、案内役ロボットとして会場に配置された“つくば太郎”や“つくば花子”などのロボットに多くの注目が集まったという。
アシモフのロボット3原則
画像2 独立行政法人 産業技術総合研究所 知能システム研究部門 副部門長 ディペンダブルシステム研究グループ グループ長 兼 筑波大学教授/芝浦工業大学教授 東京大学客員准教授 大場 光太郎氏(工学博士)
こうした流れと同時に産業界では、産業革命や自動車産業によって、製造ラインのロボット化が進められてきた。現在では当たり前のようにそうしたロボットが使用されており、日本の産業用ロボットにおいては、世界の約6割をカバーするほどの市場シェアを持っているという。
日本が産業用ロボットの分野でこれほどまで世界に誇れる技術力を持っていながら、それほど市民に定着していない理由として大場氏は「1999年にソニーが発売したペット型ロボットのAIBO(アイボ)が、エンターテインメント系(ヒューマノイドロボット=ロボットという認識)に走り始めた1つのとっかかりだった。日本は他国と比較して二足歩行ロボットの研究を以前から活発に行っている国だったが、そのような中で登場したAIBOの存在によって、ロボットのイメージというものが一気に私達の中に抱かれた」と述べた。ただし、そうした中でもロボットの明確な定義については「唱えた人はいない」という。
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