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ロボットの正しい定義とは次世代ロボット概論(1)(2/2 ページ)

ロボット社会はすぐそこまで来ている――あらゆる技術の集大成といわれるロボットだが、実はその定義はいまだ錯綜している。

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ロボットの定義

 では、ロボットとは何だろうか? 文頭で紹介した講義の中では「人間の形をしたもの」「知能を持つもの」というような意見がよく挙げられるという。大学での講師経験がある大場氏も「何がロボットか?という議題で長時間議論するが、結局最後には“答えはないですよ”と言って終わるパターンになる」という。

 以下、講演中に述べられた大場氏の解釈を基に、ロボットの定義について考えていく。

 大場氏の所属する産業技術総合研究所(以下、産総研)では、2009年3月に女性型のヒューマノイドロボット「HRP-4C」を発表している。HRP-4Cは足があり、顔があり、胴体があり、そのすべてのパーツが一体化したロボットだ。用途としては人間の代替作業やサービス(人間の役に立つ作業)とされている。

ヒューマノイドロボット「HRP-4C」ヒューマノイドロボット「HRP-4C」 画像3 産総研が発表したヒューマノイドロボット「HRP-4C」(プレスリリースより参照)


 「たしかにこれ(人間に対して何かサービスをするようもの)も、ロボットの1つの定義だといえる。ただし、組み込みをやっている方々は良くお分かりだと思うが、本体は必ずしも一体型でなくても良い。極端なことを言えば、サービスをするデバイスが空間に散らばっていて最終的に人間にサービスを提供するような型も1つの解になる。ただし、こうなってくると部屋自体がロボット化する場合もあり、それはロボットととして見なされるかというと、非常にあいまいな定義となる」

 ロボット政策を進めている経済産業省では“ロボットは一体型でなければならない”として、その条件を満たすものをロボットとして認める方針を示している。一方、大場氏が以前所属していたチームでは、“ネットワークに接続されているCPUとセンサ、アクチュエータさえあればロボットだ”という広義の意味でのロボット像を示している。


CPU+センサ+アクチュエータがロボットだとする1つの定義
画像4 CPU+センサ+アクチュエータがロボットだとする1つの定義

 「しかしそこまで話を広げてしまうと、アクチュエータの付いているほとんどのものがロボットということになってしまう。最たるものは自動車や洗濯機などもロボットとして定義される。ただし技術者からいうと、ロボットの技術が自動車や洗濯機に入っていないかというと、入っている。極論をいうと、アクチュエータ、センサ、CPUの入った組み込みシステムが、究極のロボットなのかもしれない」

 つまり大場氏の述べるロボットの定義とは「可動機構とセンシング機能があり、プログラムを覚えてタスクをこなす、組み込みシステム全般」だといえる。

日本が考えるロボット

 経済産業省と深いかかわりのある大場氏によると、経済産業省が考えるロボットとは、電子機械産業や自動車産業で使用されている産業用のロボットだという。「テレビやインターネットなどで目にする生活支援型のロボットは、経済産業省ではロボットとしてカウントしていない。というよりも、できないというのが正しい。例えば、飛行機会社が飛行機が離着陸する際に、翼部分が凍結しないよう巨大なロボットが使用されているが、あれは専門家から見るとロボットと何ら変わりはないが、経済産業省としては、中で施設として作られている機械なので、施設の一部として考えている」

 「また、工場内で走っている自動搬送車も、移動用ロボットと機構は何ら変わらないにもかかわらず、車輪が付くという理由で経済産業省の自動車科が管轄している(ロボットとしてカウントされていない)。つまり国と研究者と国民とで、それぞれ定義が異なる、それがロボット」

 研究者の中にも鉄腕アトムを作ることがロボットだと考えている人はいる。日本はとりわけアニメのイメージが先行したことで国と国民が考えるロボット像にズレが生じているのかもしれない。しかしどちらも間違いというわけではなく、ヒューマノイドロボットも産業用ロボットもそれぞれの意義を持ちながら開発が進められていくことだろう。

 次回はホンダのASIMOなどを例に、ロボットに必要な要素技術を紹介する。(次回に続く)

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