ドイツNRW州に見る、eモビリティを推進する取り組み:電気自動車
ドイツのノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州の経済・イノベーション・デジタル化・エネルギー省などは2018年10月17日、「日独スマートモビリティ・シンポジウム − イノベーションが息づくドイツNRW州」を開催した。
ドイツのノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州の経済・イノベーション・デジタル化・エネルギー省などは2018年10月17日、「日独スマートモビリティ・シンポジウム − イノベーションが息づくドイツNRW州」を開催した。
同日に、同省大臣などが出席する記者懇談会が開かれ、スマートモビリティ開発におけるNRW州の優位性や、2019年の発行が見込まれている日本とEU(欧州連合)のEPA(経済連携協定)について期待を述べた。
ドイツのスタートアップ企業15%が集まるNRW州
州都デュッセルドルフやケルンを擁するNRW州はドイツで最も人口が多い連邦州で、自動車産業を筆頭にさまざまな工業が集積する地域だ。同州のGDP(国内総生産)はドイツ最大の6900億ユーロ以上で、620社を超える日本企業が進出する。同州は、日本製造業にとって欧州の玄関口としての地位を築き上げている。
NRW州で経済・イノベーション・デジタル化・エネルギー大臣を務めるアンドレアス・ピンクヴァルト氏は「NRW州は古くから自動車産業のOEMやサプライヤーが多く集積しているが、現在では特にeモビリティを開発するスタートアップ企業の存在が目立つ」と語る。そのスタートアップ企業の例として、同氏はアーヘン工科大学が母体となり設立された「StreetScooter」と「E.GO」を挙げる。
StreetScooterは2010年に設立され、EV(電気自動車)バンなど電動の商用車を主に開発している。2014年にはドイツの国際物流大手Deutsche Post DHL Groupに買収され、順調に企業規模を拡大。2018年10月には、ケルンに所在するフォードの自動車工場でStreetScooterの電動商用車が量産されることが発表されている。
一方でE.GOは、StreetScooter創業者が同社の売却益で設立した小型乗用EVを開発するスタートアップ。ピンクヴァルト氏は、同社について「テスラモーターズ(Tesla Motors)のクルマと比較して、非常に低価格で効率も抜群に良いEVを開発している」と語る。2019年3月から量産を開始する予定だ。
この2社のようなeモビリティスタートアップがNRW州で生まれる要因について、ピンクヴァルト氏は「州内でeモビリティバリューチェーンを包括的に構築している」ためと語る。バッテリーセルの州内生産や、CASE(Connected、Autonomous、Share & Service、Electric)として関連性が高い5G(第5世代移動通信)技術開発、そしてスタートアップに求められる優秀な人材を輩出する教育が、域内で活発に実施されていることを強調した。
日欧EPAは「企業が自由に動ける裁量が広がるもの」
また、同じく記者懇談会に出席したデュッセルドルフ商工会議所で副事務総長を務めるゲルハルト・エッシェンバウム氏は、日欧EPAについて「さまざまな障壁が一気にゼロになるわけではない」と前置きしつつも「企業が自由に動ける裁量が広がるものだ」と期待を示す。
エッシェンバウム氏は、日欧EPAで期待されるメリットとして3点を挙げた。1点目は関税の撤廃。特に日本側には、「EUで設定されている乗用車と自動車部品の関税が撤廃されるため、チャンスが生まれるだろう」との認識を示した。2点目は規格標準化を推進すること、3点目はデータの越境共有で歩み寄りができていることとした。
同氏は「われわれは日本が魅力的な市場であることを常に発信する。そして、われわれのドアはこれまで以上にオープンである。皆さんと協力関係を築き上げることを楽しみにしている」と締めくくった。
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