デジタルツインの最初の一歩、日立が生産工程のデータ連携を最適化を支援:製造ITニュース
日立製作所は、生産設備の稼働状況や環境情報などのOTデータと、生産計画や在庫管理などのITデータをデジタル空間で簡単にひも付けられ、生産工程全体の最適化を支援するソリューション「IoTコンパス」を発売する。
日立製作所は2018年10月17日、生産設備の稼働状況や環境情報などのOT(制御技術)データと、生産計画や在庫管理などのIT(情報技術)データをデジタル空間で簡単にひも付けられ、生産工程全体の最適化を支援するソリューション「IoTコンパス」を同年11月19日に発売すると発表した。
スマートファクトリーなど生産現場のIoT(モノのインターネット)およびデータ活用などの取り組みは加速している。しかし、「現場情報を活用する」といっても実際には現場の中でもさまざまな場所にデータは散在しており、さらにデータの管理手法や設備の仕様、データの粒度などさまざまな条件が異なっている。これらの状況は分析を難しくしており「データのつながりをまず再現するまでの作業が膨大となるケースが多い。分析作業の全体の内の8割が実際の分析作業ではなく、これらの事前の準備で費やされている」と日立製作所 サービスプラットフォーム事業本部 IoT・クラウドサービス事業部 アプリケーションサービス第1本部 アプリケーション第2部 担当部長の藤田登氏は述べる。
これらの課題を解決するために新たに開発したのが「IoTコンパス」である。日立製作所自身の製造業としてのノウハウとデータ間の「つながり」を記録するグラフデータベースの考え方を基に、生産業務と4M(人、設備、手法、原材料)データから構成される独自のデータモデルを確立。このデータモデルを用いて、各工程の個別システムに蓄積されているITデータやOTデータ間の関連付けを簡略化し、生産工程全体におけるさまざまな業務とデータの関係を分かりやすく見える化する。また、生産工程の追加や変更が生じた場合も同じデータモデルで迅速にデータ連携を実現できる。
これらにより、作業プロセスにデータがひも付いているため、ITの専門知識のない現場の作業員でも必要な時に必要なデータを簡単に活用することができるようになり、データ分析によるPDCAサイクルを回す工数を大幅に削減できる。例えば「日立製作所内での実証では、従来であれば1つの課題を分析するのに1〜1.5カ月かかったが、IoTコンパスを活用すれば1週間で実現できるようになった。デジタルツインの最初の一歩を実現するソリューションだと考えている」と藤田氏は効果について説明する。
同システムの価格は個別見積もりとなっているが「スモールスタートの場合、1案件当たり数百万円規模を想定する」(藤田氏)だとする。また想定市場はメインターゲットを自動車および関連の産業としており、「2021年度には国内自動車メーカーでシェア7割を目指す。またグローバルでもナンバーワンシェアを目指す」(藤田氏)としている。
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