日立がタイのコングロマリットと協創に向け提携、「Lumada」の海外展開を加速へ:製造マネジメントニュース
タイのサイアムセメントグループ セメント・ビルディングマテリアルズ(SCG-CBM)と日立製作所、日立アジア(タイランド)社は、SCG-CBMの工場のエネルギー省力化や流通業務の効率化に向けた協創に関する覚書(MOU)を締結したと発表した。
タイのサイアムセメントグループ セメント・ビルディングマテリアルズ(SCG Cement-Building Materials、以下SCG-CBM)と日立製作所、同社のタイ現地法人である日立アジア(タイランド)社は2018年9月18日、SCG-CBMの工場のエネルギー省力化や流通業務の効率化に向けた協創に関する覚書(MOU)を締結したと発表した。今後3社は、日立製作所のIoT(モノのインターネット)プラットフォーム「Lumada(ルマーダ)」を活用したデジタルソリューションの開発や共同実証を行い、製造現場から物流に至るまでのバリューチェーンのさらなる効率化に向けた取り組みを進めていく方針である。
3社による覚書締結の様子。左から、日立アジア(タイランド)社 マネージングディレクターの兒玉好人氏、SCG-CBM バイスプレジデントのチャナ・プーミー氏、日立製作所 産業・流通ビジネスユニット CEOの阿部淳氏 出典:日立製作所
SCG-CBMは、セメント/建設資材、石油化学、梱包材を主力事業としてグローバルに展開する、タイの製造会社で最大手の複合企業グループ(コングロマリット)であるThe Siam Cement Public Company Limitedの傘下にあり、セメントとその他建築資材の製造/流通事業を担っている。グループ全体が幅広い事業分野をカバーしていることもあり、デジタル技術を活用した生産性の向上に取り組んでいる。
一方の日立製作所は、「電力・エネルギー」「産業・流通・水」「アーバン」「金融・社会・ヘルスケア」を注力分野として、デジタル技術を活用した社会イノベーション事業を展開。製造業で長年培ってきた経験やノウハウを基に、Lumadaの活用と顧客との協創を通じて、さまざまなデジタルソリューションを開発/提供している。グローバル展開も加速しており、2018年9月17日には、タイのチョンブリ県にあるアマタシティ・チョンブリ工業団地内に「Lumada Center Southeast Asia」を開設したばかりだ。
「工場シミュレーター」をSCG-CBMのセメント工場で活用
今回の覚書の締結を基に、さらなる経営の効率化をめざすSCG-CBMと日立製作所、日立アジア(タイランド)社は、工場のエネルギー省力化と流通業務の効率化にむけた協創を開始する。
具体的には、タイ南部のトゥンソンにあるSCG-CBMのセメント工場において、Lumadaのソリューションコアである「工場シミュレーター」を活用して生産能力や生産管理などの各種データベースを分析し、工場全体の最適な生産計画を自動で立案することで、エネルギー使用量の削減を図る。また、流通業務については、セメント配送トラックの運行データを分析し、最適な配送計画を立案することで、物流コストおよび在庫の削減を進める。
さらに今後3社は、共同実証および効果検証を行うとともに、日立製作所のデジタル技術を活用した協創を深耕させ、適用範囲拡大を検討していく。日立製作所と日立アジア(タイランド)社は、SCG-CBMとの協創により新たなサービスを構築し、Lumadaのソリューションコアとしての展開を目指す。
SCGーCBM バイスプレジデントのチャナ・プーミー(Chana Poomee)氏は「日立とSCGは、長年にわたり密接な関係を築いてきた。本日のMOUの調印は、両者による協創を通じて、日立のデジタル技術に関する知見/ノウハウを活用し、SCGの事業のソリューションにつなげる重要な機会となるとともに、両社のコラボレーションの新たなステップになる。今回の協創は、エネルギーマネジメントシステムから開始した後、他の事業にも拡大していく計画で、SCGの“Future Industry 4.0プラットフォーム”の強化につなげる」と語る。
日立製作所 産業・流通ビジネスユニット CEOの阿部淳氏は「タイの製造業をけん引するSCG-CBMと協創を開始できることをとてもうれしく思う。日立の製造/流通業における幅広いデジタル技術やLumadaを活用した協創の実績を評価していただいたものと受け止めている。この協創を通じて、SCG-CBMとともに、タイ政府が推進する『Thailand4.0』の実現に向けたイノベーションを創出したいと考えている」と述べる。
日立アジア(タイランド)社 マネージングディレクターの兒玉好人氏は「SCG-CBMの次世代バリューチェーンの構築を、日立のデジタル技術でお手伝いできることを、大変うれしく思う。昨日設立した『Lumada Center Southeast Asia』を拠点に、タイをはじめ、ASEAN諸国の製造業のデジタル化の推進に貢献していきたい」としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- コングロマリットを価値に、日立が描く「つながる産業」の先にあるもの
日立製作所はIoTプラットフォーム「Lumada」を中核としたデジタルソリューション事業の拡大を推進。その1つの中核となるのが、産業・流通ビジネスユニットである。日立製作所 執行役常務で産業・流通ビジネスユニットCEOの阿部淳氏に取り組みについて聞いた。 - IT×OTだけではない、日立のIoTを支える構造改革の経験
IoTによるビジネス変革が進む中、高い総合力を生かし新たなチャンスをつかもうとしているのが日立製作所である。同社のIoTへの取り組みと現状について、日立製作所 サービス&プラットフォームビジネスユニット 制御プラットフォーム統括本部長の阿部淳氏に話を聞いた。 - 日立は「カンパニー」から「ビジネスユニット」へ、成長のエンジンは「Lumada」
日立製作所は2018年6月8日、東京都内で同社の事業方針を投資家向けに説明する「Hitachi IR Day 2018」を開催。その冒頭、各事業やビジネスユニットの説明に先駆けて、同社執行役社長 兼 CEOの東原敏昭氏が登壇し、2018年4月からの新体制や、IoTプラットフォーム「Lumada」の展開状況などについて説明した。 - スマート工場の価値は変化への強さにあり、日立が訴える「アダプティブな現場」
日立製作所グループ「SCF2017/計測展2017 TOKYO」に出展。市場変化に即応する「アダプティブな現場」の価値を訴え、同社のIoTプラットフォーム「Lumada」の役割や事例などを紹介した。 - トヨタと日立がIoT基盤活用の実証実験を開始、突発的な故障の未然防止など目指して
トヨタ自動車(トヨタ)と日立製作所(日立)は、日立のIoT(モノのインターネット)基盤「Lumada(ルマーダ)」を活用した高効率生産モデルの構築し、トヨタのモデル工場で実証実験を開始。工場設備における突発的な故障を未然防止する実証システムの構築を目指す。 - 高効率な個別大量生産に対応する日立大みかのノウハウ、IoTプラットフォームから提供
日立製作所はIoTプラットフォーム「Lumada」を利用して、同社大みか事業所におけるIoT活用事例の一部を汎用化し、外販を開始した。今回は、RFIDで取得したデータから各工程の進捗を把握し、遅延が発生した工程の対策を検討する「進捗・稼働監視システム」、作業時間が通常よりも長くかかっている生産工程を検出し、画像分析などにより問題点を可視化する「作業改善支援システム」の2つを提供する。