パイオニアの救世主となるか、MEMS方式LiDARが量産に近づく:自動運転技術(2/2 ページ)
パイオニアは2018年10月10日、東京都内で記者会見を開催し、同年9月からサンプル出荷している車載用MEMSミラー方式LiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)の2018年モデルについて説明を行った。同社は同方式ライダーの量産準備を2019年にかけて行い、顧客の求めに応じて2020年以降より量産開始する予定だ。
望遠モデルでは角度分解能が垂直方向0.1度に
今回提供を開始した製品の中で最も遠距離に対応する望遠モデルは、太陽光の影響が大きい晴れの日で最大147m、太陽光の影響が少ない曇りの日で最大181mまでの範囲で検知が可能。視野角は水平方向15度、垂直方向が7.5度で、角度分解能が水平方向0.4度、垂直方向が0.1度となっている。最も高視野角な広角モデルは、晴れの日で最大31m、曇りの日で最大38mまでの範囲に対応し、視野角は水平方向60度、垂直方向が30度。角度分解能は水平方向0.8度、垂直方向が0.4度だ。全ての製品でリフレッシュレートが24Hzとなっている。
2019年モデルでは、2018年モデルから画角と角度分解能を据え置きつつ検知可能範囲を広げるとしており、望遠モデルでは晴れの日で最大180m、広角モデルでは晴れの日で最大42mを予定している。
レベル3自動運転の現実解となるライダーはMEMS
ライダーの量産車搭載ではコストが大きな障壁とされるが、パイオニア製MEMSミラー方式ライダーは「量産時にはどのモデルも1万円程度となる」(高木氏)見込みだ。しかし、この価格は量産効果による製造原価低減を織り込んでおり、「全ての顧客を合計して年間200万〜300万台程度」の出荷を達成することが前提条件になる。その一例として、現在の製品で2個搭載しているFPGAを「ASIC化すること」も1つの選択肢とする。
また、高木氏は「一般道でレベル3自動運転が実現するとみられる2025年頃までに、ライダー技術でブレークスルーが実現するのは難しいだろう」との見立てを語る。メカニカル式ライダーはコストとサイズ面で量産車への搭載が困難なため、2025年頃の量産車に搭載されるライダーの「現実解はMEMSミラー方式」だと強調した。
一方で、2025年以降についてはソリッドステート方式など他のライダー技術が台頭することもあり得るとし、「MEMSを含めて幅広くライダーの研究開発を進めている」(同氏)とした。
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