パイオニアの救世主となるか、MEMS方式LiDARが量産に近づく:自動運転技術(1/2 ページ)
パイオニアは2018年10月10日、東京都内で記者会見を開催し、同年9月からサンプル出荷している車載用MEMSミラー方式LiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)の2018年モデルについて説明を行った。同社は同方式ライダーの量産準備を2019年にかけて行い、顧客の求めに応じて2020年以降より量産開始する予定だ。
パイオニアは2018年10月10日、東京都内で記者会見を開催し、同年9月からサンプル出荷している車載用MEMSミラー方式LiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)の2018年モデルについて説明を行った。
Velodyne(ヴェロダイン)に代表されるモーター駆動のメカニカル方式ライダーと比較して、パイオニアが開発を進めるMEMSミラー方式は部品点数を少なくできる。量産車への搭載に重要な要素である小型かつ低コスト、信頼性の面でも有利な構造であり、同社自動運転事業の命運を握る存在だ。
同社は同方式ライダーの量産準備を2019年にかけて行い、顧客の求めに応じて2020年以降より量産開始する予定だ。レベル3の自動運転システムが一般車に普及し始める2023〜2025年頃に、事業全体で数百億円規模の売上高を目指す。
2018年モデルは何が新しくなったか
パイオニアでは2017年9月より、MEMSミラー方式ライダーのサンプル出荷を開始している。第1世代サンプル機となる2017年モデルでは、MEMSミラーに同社製HUD(ヘッドアップディスプレイ)のものを流用するなどMEMSミラー方式の原理実証機という位置付けだったが、同社スマート&オートノマスモビリティ事業開発部 部長 高木晴彦氏は「10数社の顧客で検証した結果、『非常に高い解像度を得ることができる』との評価があった」と語る。
今回発表された第2世代サンプル機の2018年モデルは、サイズを拡大した専用のMEMSミラーを搭載し2017年モデルから小型化と基本性能の向上を図った他、用途別に異なる光学系を持つ製品ラインアップをそろえたことがポイントだ。2018年モデルでは、「実際にクルマに搭載して使ってもらうことを想定」(同氏)し、2017年モデルでは未実施だった電波法に関連するノイズ影響評価、信頼性試験、環境試験を実施している。
用途別の製品ラインアップについては、遠方の小さな落下物検知用に用いる「望遠」、周辺の移動物体検知や自車位置推定に用いる「標準」、周辺環境認識と自車位置推定に用いる「準広角」「広角」と、画角が異なる4製品を用意する。製品に組み込まれるMEMSミラーも画角によって使い分けており、望遠、標準、準広角モデルでは水平方向にレーザー走査を行うラスタースキャンタイプ、広角モデルではミラーをらせん状に動かすウォブリングスキャンタイプを採用している。
ここで、画角別のラインアップ展開を用意にするため、ライダーモジュールの構造を2つのブロックに分けた。MEMSミラーを含む光学系の「スキャナブロック」は各モデルの個別設計とし、「光送受信/信号処理ブロック」は共通設計にしている。これにより、顧客の求める画角への柔軟な対応と、異なる画角を持つモデルを組み合わせた製品を容易に開発することが可能になった。
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