AIで検査はどこまで効率化できるか――IVIつながるものづくりアワード2018:FAニュース
IVIは2017年度に活動した22の業務シナリオWGの中から「つながるものづくりアワード2018」を選定し「AIによる生産ラインの生産性向上と自動化進展〜第一弾:検査工程への取り組み〜」が最優秀賞を受賞した。
インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)は2018年10月3日、2017年度に活動した22の業務シナリオWGの中から「つながるものづくりアワード2018」を選定し「AIによる生産ラインの生産性向上と自動化進展〜第一弾:検査工程への取り組み〜」が最優秀賞を受賞した。
IVIは、日本機械学会生産システム部門の「つながる工場」分科会が母体となり、2015年から活動を開始。日本の現場力を生かした「緩やかな標準」を軸とし、製造現場における具体的な問題の解決をテーマに企業間協力などの取り組みを推進してきた。2016年以降は活動の範囲を広げ、個々の問題解決の形を組み合わせたプラットフォーム化や海外での認知拡大活動、「つながる工場」の参照モデルとして「IVRA」をリリースするなど、活動の幅を広げている※)。
※)関連記事:なぜIVIは新たなスマート工場モデルを打ち出すのか
IVIでは、製造現場における課題を中心としその課題を解決したい参加メンバーが集まり「問題解決の業務シナリオ」を作るというWG活動が、活動の根幹となっている。そのWG活動の中で生まれた共通項を整備し「緩やかな標準」としてリリースする。つながるものづくりアワードはそのWGの活動を毎年評価しているものである。
今回、2017年度の活動で最優秀賞を受賞したのがWG3C1「AIによる生産ラインの生産性向上と自動化進展〜第一弾:検査工程への取り組み〜」である。マツダをファシリテーターとし、アビームコンサルティング、AAC、シーイーシー、ダイフク、デバイス販売テクノ、中村留精密工業、ニコン、NEC、パナソニック、富士ゼロックス、三菱重工業、ヤマザキマザック、リコー、YKKが参加している。
取り組みは、品質を支える官能検査(目視検査)に着目し、AI(人工知能)を活用した自動化、検出力向上、安定化に取り組んだものである。自動車のエンジン部分の検査工程での実証実験を行った。
その中で、高速判定を実施するエッジ側、深層学習とナレッジを蓄積するクラウド側でのそれぞれのシステム構築とともに、実際に現場に展開可能なフレームワークなどを試行錯誤を重ねて構築。検出度向上に関して、システムのみならず、検査環境、現場での知恵を総動員して一定の成果を挙げられた点が「日本的なモノづくりの精神を感じさせるもの」として高く評価を受けた。
その他、小島プレス工業をファシリテーターとしたWG3E01「拡張MESによる生産改善」、CKDをファシリテーターとしたWG3B02「鍛造プレスラインにおける予知保全と品質向上」、ブラザー工業をファシリテーターとしたWG3A03「BOPを使った製品設計情報と生産技術情報のクラウド連携」が優秀賞を受賞している。
IVIの総評では「2017年度の特徴として、設備の稼働や生産性向上だけでなく、現在の日本の大きな課題でもある、品質向上やトレーサビリティーの担保などに取り組みが広がり、大きな成果を上げていることが挙げられる」としている。
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