人間そっくりな眼科手術シミュレーターに緑内障眼球モデルを追加:医療技術ニュース
名古屋大学は、人間そっくりな眼科手術シミュレーター「バイオニックアイ」に搭載可能な、低侵襲緑内障手術用眼球モデルを開発した。精密な隅角構造とシュレム氏管の管腔構造を備え、模擬血液として赤インク水溶液を注入できる。
名古屋大学は2018年9月12日、人間そっくりな眼科手術シミュレーター「バイオニックアイ(Bionic eye surgery evaluator: Bionic-EyE)」に搭載する、低侵襲緑内障手術用眼球モデルを開発したと発表した。同大学大学院工学研究科 教授の新井史人氏らが、東京大学と共同で研究した。
研究グループは今回、これまで開発してきた眼科手術シミュレーターのバイオニックアイに搭載可能で、低侵襲緑内障手術(Minimal Invasion Glaucoma Surgery: MIGS)の訓練に使用できる眼球モデルを開発。この眼球モデルは、緑内障の線維柱体切開術に必要となる微細な鈎針「マイクロフック」を用いたMIGSに対応する。
具体的には、まず精密加工によって作製した造形型を用いて、シュレム氏管構造と透明角膜を持つ眼球モデルを作製。シュレム氏管は、眼内を循環する房水の排出経路の1つで、500μm程度の環状の中空構造を持つ。開発した眼球モデルでは、このシュレム氏管の中空構造を保ったまま、模擬線維柱帯を積層することに成功した。これにより、模擬血液として赤インク水溶液を注入することが可能になった。この眼球モデルをバイオニックアイに搭載し、眼科手術シミュレーターとして統合した。
また、この眼球モデルは、形態学に基づいた眼球形状を採用しており、市販の隅角レンズや開瞼器、マイクロフックなどの臨床で使用される器具を用いて練習できる。そのため、眼科手術シミュレーターを用いて、開発中や新規開発の医療器具を評価することも可能だという。今後は、強膜薄切による線維柱帯切開術や切除術のシミュレーションが可能な眼球モデルとするため、模擬強膜の開発を行う予定としている。
マイクロフックを用いたMIGSでは、シュレム氏管に近傍する角膜の内側や虹彩に接触すると、角膜内皮細胞が減少し、角膜の白濁や痛みなどが起こる。そのため、シュレム氏管を隅角レンズで観察しながらマイクロフックを接近させるには、多くの練習が必要となる。しかし、精密な隅角構造とシュレム氏管の管腔構造を持つ線維柱帯としての薄膜構造が積層された眼球モデルは、これまで存在しなかった。
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