「HAKUTO」再び、ispaceが“史上初”の民間月面探査プログラムとして再起動:宇宙開発(2/2 ページ)
月面開発ベンチャーのispaceが新たな民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」について説明。HAKUTO-Rでは、新開発のランダー(月着陸船)による月周回ミッションを2020年半ばに、ランダーによる月着陸とローバーによる月面探査を行うミッションを2021年半ばに行う計画だ。
デュアルローバーで月の縦穴の探査にもチャレンジ
HAKUTO-Rでは、スペースXの再使用型ロケット「Falcon9」を使って、米国フロリダ州のケネディ宇宙センターまたはケープカナベラル空軍基地からランダーを打ち上げる。2020年半ばのミッション1では、ランダーを地球周回軌道から月まで航行させて月周回軌道に投入し、軌道上からの月探査を行う。2021年半ばのミッション2では、ランダーは月面に軟着陸してローバーによる月面探査を行う。なお、スペースXとの打ち上げ契約は、他事業者と相乗りする「セカンダリー」となっている。
ミッション2の着陸地点は「ラカスモーティス」と呼ばれており、縦穴があることが知られている。急斜面となる縦穴の探査を実現するため、四輪のローバーと二輪のローバーを用いたデュアルローバーを採用する計画だ。「縦穴の探査はエクストラのミッションになるが、人類史上初の試みであり、ぜひチャレンジしたい」(ispace ディレクター兼CEOの中村貴裕氏)。
HAKUTO-Rの資金は、2018年2月までにispaceが調達した103億5000万円の範囲内で賄う。ただし、ローバーの命名権やロゴ掲載が可能な「スポンサーシップ」や、ランダーに搭載する予定の4K/8Kカメラの利用や商品の搭載、月環境での実験などを行える「ペイロードデリバリー」によるパートナーも募っていく。また、一般向けのサポーターズクラブも間もなく発足させる予定である。
新開発のランダーは、2018年8月に国内外26人の専門家による基本設計審査を通過しており、現在は詳細設計に移行している。2019年4〜6月期に詳細設計を終えてランダーの製造を始める計画だ。ランダーと並行してローバーの開発も進め、2020年には月面を模擬した地上実験を行うとしている。
なお、月周回のみを行うミッション1と、月着陸を行うミッション2ではランダーの仕様が異なっている。2019年4〜6月期に完了を目指す詳細設計は、ミッション2向けのものとなる。
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