インダストリー4.0時代に最適な働き方とは何か、“Work4.0”が示す道:モノづくり最前線レポート(2/2 ページ)
ロボット革命イニシアティブ協議会は「第4次産業革命下における製造業の人材育成について」をテーマに、RRI“Work4.0”セミナーを開催。日本とドイツの両国での人材育成の状況把握や課題認識などについて意見交換を行った。
日本のデジタル変革における新たな働き方とは
続いて日鉄住金総研 客員研究主幹 日本機械工業連合会IoT・AI時代のものづくり人材調査専門部会 調査員の山藤康夫氏が登壇。「これからの製造業と人材育成」と題して、日本とドイツの教育・訓練の制度を比較し、これからの製造業や、その中で人間の役割など同部会の取り組んでいる項目などを紹介した。
このうち、日本とドイツの社員教育を比較してみると「これは主観だが日本は企業ごとに教育訓練を行い、また、新人教育というものがある。ドイツは実社会を経験してから入社してくる人も多いことから新人教育はあまりない。ドイツでは理論と実践の融合した職業訓練が行われており、日本でこれに一番近いものが高専(高等専門学校)だと思われる」と述べた。
また、同部会に参加する18社に「諸外国が改革を進めている中で、現場が強いといわれている日本はどうなるか」というアンケート調査を行った結果を紹介した。
調査結果を見ると、現場の人たちの認識としては「このままでは、日本の現場(製造、設計など)での強みはなくなる」という危機感を抱いた声が多数を占めた。一方で、この対応策としては設計の現場からは「デジタルトランスフォーメーションの流れに乗ることが必要であり、デジタルツインやサイバーフィジカルシステムなどの技術を使って、アジャイル開発などスピード感を持った体制にもっていかなくてはいけない」などの改革を進める意見が多かったとしている。
ダイキンの取り組む人材育成
この他「AI/IoTの全社的活用に向けて 〜さまざまな実践を通じての学びと(再)教育制度〜」をテーマにダイキン工業 テクノロジー・イノベーションセンターリサーチ・コーディネーター RRI/WG1/SWG4委員 WG1/AG1/Use Case TF委員の伊藤宏幸氏が講演した。
2017年度の売上高が約2兆3000億円という世界最大規模の空調機器メーカーに成長したダイキン工業では、その人材確保および教育方法にもユニークな手法を取り入れている。
「国内で空調機は総合家電メーカーや、重工業メーカーが製造しているケースが多い。その場合、さまざまなドメインに専門家がおり、問題が起きたとしても、うまくコーディネートさえすれば、問題を社内で解決できる人がいる。ダイキン工業は空調専業メーカーであり、それが望めない。そのため、新しい事業展開をすることで新しい人をひきつけるという取り組みを実施している」(伊藤氏)。
例えば、油機事業部に「インテリジェント化を図る」ということを掲げ、新たにロボットシステム部を設けた。それにより、産業ロボットに携わりたいという人材が多数入社し、現在は空調のインバータ化などの技術に貢献しているという。さらに、空調機の電子制御化に対応する人材確保のために、高速3Dグラフィックディスプレイ事業などを始める取り組みもあった(現在は終了)。
一方、教育についても独自の施策を進めている。空調機の制御は当初、リレー制御で行っていた。それが1980年代にはインバータエアコンの時代となり、制御はリレーからマイコンの時代に移った。「ここまでくるとそれまでの機械技術者の発想では対応できなくなり、それを機にダイキン電子大学を立ち上げ機械技術者に電子工学の知識を教育した」(伊藤氏)。
それに続いて、最近のデジタル化の波に対応するために、ダイキン情報大学も設けている。デジタル化は電子化以上に社会変革につながる部分が大きくなる。それが産業構造やプレヤーまで変えてしまう可能性がある。そこで情報大学では「ITの専門家」を育成するだけでなく「ITの分かる機械・化学・電子技術者」の育成を目指している。
「このようにダイキン工業では自社の事業を理解し、やりたい商品開発や業務改革をやり遂げるための独自の人材教育に取り組んでいる」と伊藤氏は取り組みについて紹介した。
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