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亜鉛不足はなぜさまざまな症状を起こすのか、メカニズムの一端を解明医療技術ニュース

京都大学は、亜鉛不足が細胞外ATP代謝を遅延させ、細胞外でのATPの蓄積と、ATPの分解産物であるアデノシンの減少を引き起こすことを明らかにした。

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 京都大学は2018年8月28日、亜鉛不足が細胞外ATP(アデノシン三リン酸)代謝を遅延させ、細胞外でのATPの蓄積と、ATPの分解産物であるアデノシンの減少を引き起こすことを明らかにしたと発表した。同大学生命科学研究科 准教授の神戸大朋氏らの研究グループが、同大学大学院農学研究科、東北大学、山梨大学と共同で行った。

 亜鉛は、生体内でさまざまなタンパク質と結合して機能を発揮する。その1つに、特定の酵素の活性中心に配位して酵素反応を触媒する、触媒因子としての機能がある。こうした酵素は亜鉛要求性酵素と呼ばれ、さまざまな代謝経路に点在している。

 一方、生体において重要な細胞外ATP代謝は、炎症などのシグナルに関わる重要な代謝経路として機能する。細胞外へ放出されたATPは種々の分解酵素によりADP、AMP、アデノシンまで分解されるが、ATPとADPは炎症など、アデノシンは抗炎症などのシグナルを細胞膜に発現した受容体を介して誘発する。分解酵素や受容体の異常によって細胞外ATP代謝が破綻すると、炎症や創傷治癒遅延などの症状を引き起こす。

 研究グループは、亜鉛欠乏症による症状と細胞外ATP代謝の破綻による症状は共通点が多いこと、細胞外ATP代謝に関わる酵素(ENPP、CD73、ALP)の多くが亜鉛要求性酵素であることに着目。亜鉛の欠乏がこれらの酵素活性を低下させることで細胞外ATP代謝が弱まり、これが亜鉛欠乏症の症状に関連していると仮定した。

 研究では、ENPP、CD73、ALPの各酵素活性と細胞外ATP代謝の変化を比較した。その結果、培養細胞の膜画分、ラットの血漿(けっしょう)において、亜鉛欠乏では各酵素活性が低下し、細胞外ATP代謝が遅延していることが分かった。つまり、亜鉛欠乏状態では細胞外ATP分解活性が低下して細胞外にATPが蓄積し、これに伴ってアデノシンの産生が低下することを示すことができた。

 また、ラットでの各酵素活性の低下や細胞外ATP代謝の遅延は、わずか数日の亜鉛欠乏食を摂取しただけで生じていた。さらに、活性が低下しても、亜鉛十分食を1日摂取しただけで劇的に回復していた。

 これらの成果は、亜鉛と細胞外ATP代謝が、亜鉛要求性酵素の機能を介して密接に関連することを示している。そして、亜鉛欠乏症のさまざまな症状が、細胞外ATP代謝の異常が引き金となって起きることを示唆する。

 今後、実際の亜鉛欠乏症の症状において、亜鉛と細胞外ATP代謝がどう関連しているのかを検証することが必要だという。また、この成果により、細胞外ATP代謝における亜鉛の機能について詳細な知見が解明されることが期待されるとしている。

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同研究のイメージ(クリックで拡大) 出典:京都大学
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細胞外ATP代謝には、4種のエクト型酵素(CD39、ENPP、ALP、CD73)が重要な役割を果たす。ENPP、CD73、ALPの活性は、亜鉛欠乏で大きく低下する。(クリックで拡大) 出典:京都大学

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