日本発のユニコーンは生まれるのか、支援する政府の取り組み(前編):モノづくり最前線レポート(2/2 ページ)
イノベーションジャパン(大学見本市&マッチングフェア、2018年8月30〜31日、東京ビッグサイト)のNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)セミナーでスタートアップに関連した4つの講演が行われた。本稿では前編で経済産業省 経済産業政策局 新規事業創造推進室 室長補佐の原大樹氏と、日本貿易振興機構(JETRO)知的財産・イノベーション部イノベーション促進課長の奈良弘之氏の講演内容を紹介する。
イノベーションスタートアップの海外展開に力を入れるJETRO
続いて、JETROの奈良氏が「ジェトロのイノベーション支援施策と海外のエコシステムについて」と題して、スタートアップの海外進出支援と海外の主要なエコシステムについて説明した。
JETROは日本企業の海外展開支援、対日投資の促進などをメインのミッションとしているが、「ここ数年は、イノベーションスタートアップに力を入れようとしている」(奈良氏)。スタートアップの各成長ステージに合わせた各種支援事業を関係機関や大学などと連携し、質量ともに拡充した支援ツールを提供する方針だ。
具体的にはステップ1で、海外のエコシステムを体感・理解してもらうプログラムを用意(飛翔Next Enterpriseプロジェクト)する。ステップ2では海外の展示会やスタートアップイベントへの参加(J-Startup支援事業、欧州イノベーション事業)を支援する。そして、ステップ3では、海外で資金調達、パートナー探し、ライセンスアウトなどを行う(ジェトロ・イノベーション・プログラム事業など)。
ステップに合わせた支援プログラムを用意
「飛翔Next Enterpriseプロジェクト(架け橋プロジェクト)」は、日本全国各地から高い技術力や優れた事業アイデアを持つ中堅、中小、ベンチャー企業などを募り、選抜された企業がシリコンバレーをはじめとする世界各地のベンチャーエコシステムの仕組みと活用方法を体感できるようにして、海外進出に必要な知見の理解を促進する。この取り組みは2016年度から行われており、2018年度はシリコンバレーとインドの2つのコースを予定している。
また、「J-Startup」支援事業では、アジア、中東、欧州のスタートアップイベントへの出展を行う。特に、まだ関心が薄い欧州に関しては「欧州イノベーション・ミートアップ事業」を別に設けて、欧州の大規模スタートアップイベントに派遣し、欧州でのエコシステムを利活用した取り組みを実施している。この他、「欧州オープン・イノベーション・ショーケース事業」として、欧州自動車メーカーとの個別商談を先方の本社敷地内で実施するマッチングイベントを計画している。
「ジェトロ・イノベーション・プログラム(JIP)」は、イノベーティブな技術・製品・ビジネスモデルを持つスタートアップ企業の海外ビジネス展開を支援するものである。「海外展示会への出展などもあるが、それよりも重要なのは出展に至る教育がメインだと考えている。特許庁の補助事業にもなっており、海外で知財を活用することを目指す事業となっている」(奈良氏)。2018年はシリコンバレー、ベルリン、タイ、インドネシア、マレーシア、深センなどで開催している。
この他、「ジェトロ・グローバル・アクセラレーション・ハブ」を全世界12カ所で開設した。これは、世界各地のスタートアップエコシステム先進地域で、現地有力スタートアップアクセラレータなどと提携し日系スタートアップの現地進出やマッチング支援と現地スタートアップの日本進出支援、それぞれの最新動向や情報の収集を行うとしている。
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