アウディ新型「A8」はレベル2で日本導入、2019年には「AIアクティブサスペンション」も:自動運転技術
アウディジャパンは2018年9月5日、東京都内で会見を開き、フルモデルチェンジした「A8」と「A7 Sportback」を日本で発売すると発表した。両モデルとも、電源電圧が48Vのマイルドハイブリッドシステムや、全面タッチパネルのインフォテインメントシステムなど新技術を採用した。A7 Sportbackは同年9月6日から、A8は同年10月15日から販売を開始する。
アウディジャパンは2018年9月5日、東京都内で会見を開き、フルモデルチェンジした「A8」と「A7 Sportback」を日本で発売すると発表した。両モデルとも、電源電圧が48Vのマイルドハイブリッドシステムや、全面タッチパネルのインフォテインメントシステムなど新技術を採用した。A7 Sportbackは同年9月6日から、A8は同年10月15日から販売を開始する。
アウディは2017年7月に、「レベル3の自動運転に対応した世界初の市販モデル」(同社)としてA8を発表したが、国際条約や各国の法規制との兼ね合いからいずれの市場向けでもレベル3の自動運転システムは搭載していない。そのため、A8は日本でも、レベル2の自動運転、つまり先進運転支援システム(ADAS)を使用可能なモデルとして投入する。
センサーが検知した路面情報に合わせてサスペンション制御
新型A8にはLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)やミリ波レーダー、カメラ、超音波センサーを23個搭載している。これらのセンサーで車両の周囲360度を監視する。23個のセンサーの情報は、統合制御ユニット「セントラルドライバーアシスタンスコントローラー(zFAS)」で処理する。zFASは、NVIDIAのプロセッサ「Tegra K1」、Infineon(インフィニオン)の車載マイコン「Aurix」、Intel(インテル)が買収したAltera(アルテラ)のFPGA「Cyclon V SoC」、Mobileye(モービルアイ)の画像処理プロセッサ「EyeQ3」で構成されている。
多くのセンサーと、その情報を処理可能なzFASの組み合わせにより、高度なADASが実現したとしている。A8から新たに追加された機能としては、見通しの悪い交差点を横切る車両の存在を警告する「フロントクロストラフィックアシスト」や、車線維持のアシストと前方車両に追従した加減速を同時に行う「アダプティブドライブアシスト」などがある。アダプティブドライブアシストは、LiDARの採用によって急に割り込まれてもスムーズに減速できるようになった。
2019年以降には、周辺監視用センサーの情報をサスペンションの制御に応用する「AIアクティブサスペンション」が新型A8に導入される予定だ。LiDARとカメラが検出した路面の凹凸に合わせてサスペンションのストロークを操作し、車両の姿勢をアクティブにコントロールするというものだ。サスペンションのストロークは、マイルドハイブリッドシステムの48V電源を使用して最大1100Nmを発生させる電動アクチュエーターが操作する。
AIアクティブサスペンションは、側面衝突が起きた場合にも動作する。周辺監視用センサーが時速25km以上の速度で側面に衝突されると判断すると、衝突される側のボディーを最大で8cm持ち上げて、強度が高いサイドシルとフロア構造で衝突を受け止められるようにする。衝突時に乗員にかかる負荷は、ボディーを持ち上げない場合と比べて50%軽減できる。
販売するのはレベル2まで対応の車両
日本で2018年10月に発売されるA8は、LiDARや統合制御ユニットといったレベル3の自動運転でも使用する部品を搭載しているものの、実質的にはレベル2専用となる。現在のA8ではレベル3の自動運転車に不可欠なハードウェアを省略しているため、A8がレベル3の自動運転車として法的に認可を受けても、ソフトウェアの更新ではレベル3にアップグレードできないという。
今回省略したハードウェアの1つがドライバーモニタリングシステムだ。アウディが2017年7月に発表したレベル3の自動運転「AIトラフィックジャムパイロット」は、前後の車両と接近したノロノロ運転となる渋滞時に運転操作を代行する機能で、中央分離帯がある道路を時速60km以下で走行している場合にセンターコンソールのスイッチを押すと有効になる。自動運転中は他のクルマの割り込みにも対応し、ドライバーがステアリングから手を離しても機能は継続する。渋滞が解消したり走行速度が時速60kmを超えたりすると、ドライバーは運転に復帰しなければならない。この時にドライバーが運転に復帰できるかどうかを車両側で判断するドライバーモニタリングシステムが必要になるが、現在のA8には搭載されていない。
また、システム異常時に安全な場所に退避するまで運転を継続するには、ブレーキやステアリングにバックアップ回路を設ける冗長化が必要だが、現時点のレベル2専用のA8では対応していない。
まだ量産されていないAIトラフィックジャムパイロットだが、発表したことが法規制の議論に対して刺激になっており、発表した意義があったとみている。現在、レベル3以上の自動運転に関して、国連欧州経済委員会では時速10km以上の速度域での自動操舵(そうだ)の扱いについて議論しているところだ。さらに、ジュネーブ条約やウィーン条約では、人間ではなくシステムが運転することについて議論している。
アウディジャパン 代表取締役社長のフィリップ・ノアック氏は「アウディはレベル3の自動運転に必要な法整備が整うのを待っている段階だ。認可が下りればいつでも導入する準備はできている。(日本法人であるアウディジャパンとして)国土交通省にだけ働きかけるのではなく、グローバルで自動運転に対するコンセンサスが取れることが重要だと考えている。日本は重要なマーケットなので、レベル3の自動運転を導入できる法整備が進むよう、アウディ本社に働きかけていく」と説明した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- なぜ“自動運転”の議論はかみ合わない? レベル3とレベル4を分けるのは
「人とくるまのテクノロジー展2018」の主催者企画の中から、筑波大学 システム情報系 教授である伊藤誠氏の「自動運転」に関する講演を紹介する。 - 高級車から広がる48Vシステム、ディーゼルエンジンに代わる環境技術に
聞いたことはあるけれど、正確に知っているかといわれると自信がない……。クルマに関する“いまさら聞けないあの話”を識者が解説します。第4回は、ディーゼルエンジンに対する逆風が強まる中、製品化が相次いでいる「48Vシステム」です。48Vシステムの特徴とは一体何でしょうか。 - 自動運転車がシステム異常時にも安全な場所まで走るには
ルネサス エレクトロニクスは報道向けに「レベル4」の自動運転車を披露した。車両は2017年1月のCESに出展したもので、ルネサスとカナダのウォータールー大学や協力企業で共同開発した。ハードウェアの故障やハッキングが起きても自動運転のまま安全な場所まで退避する様子を車両で実演した。 - ドライバーの周辺監視なしの自動運転、アウディ新型「A8」で2018年以降に導入
Audi(アウディ)は、フラグシップセダン「A8」の新モデルを世界初公開した。高速道路を時速60km以下で走行中にアクセルやブレーキ、ステアリングを自動で制御し、ドライバーの周辺監視なしでも走行できる。各国でのテストや承認手続きを経て、2018年以降に段階的に導入するとしている。 - 開発加速するLiDAR、レベル3の自動運転に向けて
レベル3の自動運転システムに向け、LiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)の開発が加速している。サプライヤー各社がライダーの量産を開始する時期は、2020年ごろに集中する見通しだ。「人とくるまのテクノロジー展2018」にサプライヤー各社が出展したライダーを振り返る。 - 日産とモービルアイ、ゼンリンがレベル3の自動運転向け地図を共同開発
日産自動車とMobileye、ゼンリンは2018年中に日本全国の高速道路を対象に自動運転用の高精度地図を作製する。 - 自動運転システムは「低消費電力でやれることに限界」、レベル3で50Wも許容範囲
Intel(インテル)は「Embedded Technology 2017(ET2017)/IoT Technology 2017」において、同社のFPGAである「Arria10」を使った物体識別のデモンストレーションを実施した。 - アウディの自動運転車とサーキットで対決、人間のドライバーは勝てるのか
アウディが米国カリフォルニア州のソノマ・レースウェイで自動運転車の体験試乗会を開催。アウディの「RS7」ベースの自動運転車「ロビー」と、かつて自動車レースで腕を鳴らした筆者が運転するRS7で、どちらが早く周回できるかで対決した。果たしてその結果は!? ロビーの自動運転の仕組みなどについても紹介する。