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FFコンパクトカーにLSD、ハブユニットは車両の統合制御のセンサー役に機械要素(2/2 ページ)

ジェイテクトは2018年7月12日、伊賀試験場(三重県伊賀市)で報道など向けに製品・技術体験会を実施した。体験会では、トヨタ自動車のコンパクトカー「オーリス」をベースに開発中の「高剛性ハブユニット」や「トルセン タイプD」を搭載した車両に試乗することができた。コンパクトカーの走行性能を向上させる2つの部品について紹介する。

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トルセン小型化、オープンデフと置き換え可能に


オーリスにLSDを搭載すると……(クリックして拡大)

 体験会では、全長を従来比23%短縮し、一般的なディファレンシャル(差動装置)であるオープンデフと置き換えが可能になった新型の「トルセン(トルク感応型差動制限装置)」も披露した。2021年の量産を予定している。

 ジェイテクトのトルセンは、トヨタ自動車とAudi(アウディ)の4WD(四輪駆動)車向けのセンターデフが生産量の9割を占めている。しかし、今後はセンターデフの需要が減少する見通しだ。それに対応し、小型化によって左右デフへの展開を強化することが狙いとなる。

 一般に、左右デフとして用いられるLSD(リミテッドスリップデフ)はスポーツモデルでの採用がほとんどだったが、FF(前輪駆動)車や、FFベースの4WD車に搭載することにより、雪道での安定性向上などクルマの“素性”を良くすることができるようになると見込む。例えば、雪道で路面のミュー(摩擦係数)が左右で異なるような場面で直進加速の安定性を向上させたり、滑りやすい路面でのレーンチェンジや定常旋回でステアリング操作の修正を少なくしたりするといった効果が出せる。

 体験会では、新型トルセンを搭載したオーリスと、量産仕様でオープンデフのオーリスを比較することができた。ウエット路面で定常円走行をすると、オープンデフのオーリスは少しずつ円の外側へと軌道がずれてしまう。また、外に膨らんでしまう不安から、速度を上げることがためらわれた。これに対し、新型トルセンを搭載したオーリスは、速度を上げても外側に膨らまずに定常円走行を続けることができた。

 ただ、従来のトルセンをオープンデフのフロントアクスルに収めるのは難しかった。トルセン内部のギアのうち、プラネットギアはかみ合い部分を確保するためサイドギアよりも歯幅を長くする必要があり、ギアの全長が長くなってしまうためだ。

ジェイテクトのトルセン。量産品のタイプB(左)と開発中のタイプD(右)(クリックして拡大)

トルセン タイプDのプラネットギア。従来は歯筋のないシャフト部分が必要だったが、異なる歯筋を切れ目なく共存させている(クリックして拡大)

 新型トルセンのタイプDはプラネットギアの構造とギア同士のかみ合い構成を見直し、従来のプラネットギアにあった歯筋のない部分を短縮。異なる種類の歯筋を切れ目なく1つのプラネットギアに共存させる加工法も開発した。これによりギア同士のかみ合いが増えて強度が向上し、プラネットギアの搭載個数を減らすことが可能になった。その結果、現行のトルセンであるタイプBに対し、同等の全長のまま軽量化したり、同等の強度でありながら軸長を短縮して小型軽量化したりすることが達成できるという。

 センターデフやリアデフとして採用されてきたタイプBのトルセンは、今後はタイプDに置き換えていく。デフが小型化することで、クラッチを追加するなど駆動系に付加価値を持たせていくことができるためだ。

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