日本の積層造形の取り組みは周回遅れ、今から世界に追い付くには?(前編):金属3Dプリンタ(2/2 ページ)
金属3Dプリンタの最新動向や課題を語る「Additive Manufacturingのためのシミュレーション活用セミナー」(サイバネットシステム、アンシス・ジャパン主催)が2018年7月4日に東京会場、5日に名古屋会場で開催された。
ソフトで設計者の経験不足を補う
ANSYSは2018年から金属3Dプリンタ用シミュレーションツール「ANSYS Additive Print」および「ANSYS Additive Suite」を提供している。「当社は金属、特にPB方式とデポジション方式に注力している。その理由はAMの生み出す価値の77%がPB方式によるものだからだ」とANSYS AE Manager(Additive Manufacturing)のChris Robinson氏は語った。「AMにはさまざまなメリットがある。ただし問題は、試行錯誤にコストがかかりすぎること。また設計者にAMの経験が少ないという問題もある」(Robinson氏)。
AMでは設計と造形現場、材料などの専門家による分析のサイクルを回す必要がある。そのために設計者も造形工程を深く知ることが欠かせない。設計者はシミュレーションを利用することで、AM技術について勉強することができるとRobinson氏は話した。
ANSYSが提供する3Dプリントソフトウェアでユニークなのは、PBプロセス全体をシミュレーションできることだという。また目視では確認できない非常に小さな変形の勾配を見ることもできる。積み重ねの繰り返しも解析し、サポートの切り離しの際の残留ひずみなどもシミュレーション可能だ。
シミュレーション機能はANSYSの操作環境「ANSYS Workbench」内で、カスタマイズツール「ACT」のAM用カスタマイズにチェックを入れると利用可能になる。「パウダーが溶けて固まるという現象を把握するのはかなり難しい課題になるが、ウィザードを設定してくことでセッティングできる。材料データは現在は4種だが、随時追加していく」(アンシス・ジャパン 技術部メカニカルチーム マネージャーの一宅透氏)。FEM解析のためメッシュが必要になるが、カーテシアンメッシュという六面体メッシュを使用する。サポートは自動的に作ることができ、3D CADの「SpaceClaim」によりサポート形状をあらかじめつけてから読み込むことも可能だという。またデポジション方式についてはAdditive Suiteに搭載しており、今後も機能を向上させていく予定だという。
ANSYSのトポロジー最適化では、プリポスト、ソルバーから最適化までを一体化している。またSpaceClaimはSTL化だけでなく3Dプリント用の編集機能が充実しているという。また今は構造解析だけだが、いずれはマルチフィジクスにも対応予定だという。
ラティス構造は人の手でモデリングするには形状が細かすぎる。ラティスの太さを場所によって変化させることにより、素材を変えることなくマクロな物性を最適化することも可能になる。(後編に続く)
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